研究課題
[研究の目的] タンデム自転車エルゴメータを用いれば、例えば前乗り被験者が能動ペダリングを担当すれば、後ろ乗り被験者は、受動動作のペダリングが可能となる。この方法を用いることにより受動的動作での筋血流量増大、筋温上昇、心拍数や酸素摂取量の増大を確認できる。受動的動作での末梢の活性化が脳血流の促進に寄与するのであれば、受動的な動作においても中枢の活性化が生じるという学術的な「問い」に答えることができると考えた。本研究の目的は、受動的なペダリング運動時の筋血流量と脳血流量の関係性の解明にある。[研究実施計画] 本研究は、筋血流量と脳血流量を定量し、心拍数・酸素摂取量との関連性を明らかにする計画を立てている。[研究の成果の具体的な内容] 2019年度の成果を2020ECSS(ヨーロッパスポーツ科学会議)に発表した。2020年度は、筋血流量増大と前頭前野酸化ヘモグロビン濃度変化の関連性を明らかにする実験計画を立てていたがコロナ禍の影響により、計画が遅延している。前乗りの負担度が高い要因は、前乗りと後ろ乗りという構造上の要因も大きいという予測から、2021年度に室内用のサイクルトレーナーを考案し、この予測の解明に取り組んでいる。[研究の成果の意義・重要性] 本研究の成果は、脳血流の促進に能動運動が寄与するという定説に加え、受動的動作においての脳血流の促進に寄与する重要なエビデンスを捉えている。脳卒中などで一時的に随意運動が制限された状況にあっても受動的動作を積極的に取り入れることで中枢神経を活性化させる可能性を示唆する意義を持つと考えられる。サイクルトレーナーから得られる情報により前乗りと後ろ乗りのどちらが受動的動作での効果が大きいのかを確認できる。
3: やや遅れている
理由本研究は、筋血流量と脳血流量を定量し、心拍数・酸素摂取量との関連性を明らかにする計画を立てている。研究開始から3年間経過し、受動ペダリング運動時の心拍数及び酸素摂取量がペダル回転数の増加に依存し、その増加は、有意であることを確認している。2019年度には、受動ペダリング運動時の前頭前野の酸化ヘモグロビン濃度を前等測定型functional NIRS装置を用いて測定し、脳血流量の定量への取り組みを行った。その研究成果を「受動ペダル運動時の心拍数と前頭前野酸化ヘモグロビン濃度変化の関連性」として国際学会であるECSS2020(European College of Sports Science 2020,Spain)にて公表した。ポスター演題としてアクセプトされた。新型コロナウィルスによる影響で会議が延期になったが、オンライン学会(2020年10月28日発表)として成立した。2020年及び2021年度に受動ペダリング運動時の筋血流量と脳血流量の関連性に関する実験を計画していた。しかしながら、新型コロナウィルスによる影響で実験実施場所である川崎医療福祉大学への分担研究者の移動が困難になったこと、同時に被験者の確保、呼気ガスの分析を行うため実験環境の確保が困難となったために、実験を延期している。コロナ禍の制限が解除されれば実験を裁可する。一方で、本学の分担研究者だけで行うことのできる実験計画を立案し、室内用のサイクルトレーナーを考案し、作成した。タンデム自転車の後輪にローラー装置を組み込んだサイクルトレーナーは初めての試みである。受動ペダリング運動も可能な設計であり、延期している課題への取り組みも続ける。
本研究課題の目標は、①筋血流量を定量し、酸素摂取量との関連性を明らかにすること、②脳血流量を定量し、酸素摂取量との関連性を明らかにすること、③筋血流量と脳血流量との関連性を明らかにすること、としている。①と②については、既にデータ取得済であるが新型コロナウィルスによる影響により、国内だけでなく、海外の学会の開催が延期となっているため、PDCAサイクルにおけるCheck項目である学会発表などによる研究成果の公表と評価を可能な範囲で行っている。限定的な評価ではあるが国際学会(オンライン学会)において有用なコメントを得ている。今後、これまでの実験成果の学術誌への論文投稿(Do)を推進することとする。遅れている③の実験については、実験の再開を計画することとするが、一方で現状での可能な範囲での実験も立案している。具体的には前乗りの負担度が高い要因は、前乗りと後ろ乗りという構造上の要因も大きいという予測から、2021年度に室内用のサイクルトレーナーを考案し、この予測の解明に取り組んでいる。また、実験室での呼気ガス分析が新型コロナウイルス予防対策上難しい場合には、フィールドでの実験を立案し、③の実験を遂行する。すでにフィールドでの実験については、予備実験を終了し、所属機関の倫理委員会の承認を得て③の実験に取り組んでいる。
本研究課題の目標である①の実験、②の実験及び③の実験については、すでに実験を終了し、国内学会、国際学会に発表済みである。さらにコロナ禍の影響により一部計画を変更した実験についての発表を2022年度に行うことにしている。また、これらの成果の国際誌への投稿を準備中である、英文校正料及び投稿料に予算を計上する。
すべて 2021
すべて 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)