研究課題/領域番号 |
18K10951
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研究機関 | 日本体育大学 |
研究代表者 |
村井 敬太郎 日本体育大学, 体育学部, 准教授 (10755987)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 特別支援学校(知的障害) / 知的障害 / 体育授業 / 運動有能感 |
研究実績の概要 |
知的障害のある児童生徒が運動やスポーツ、体育授業といった運動場面に積極的に取り組むためには、運動技能の向上を図るばかりでなく、運動場面での動機づけを高めたり活動の楽しさを味わったりすることなどが必要である。その中でも特に自己の運動能力、運動技能に対する肯定的認知に関する「身体的有能さ」、自己の努力や練習によって運動をどの程度コントロールすることができるかを認知する「統制感」、運動場面で教師や仲間から受け入れられているという認知に関する「受容感」で構成された、運動場面における自信を示す「運動有能感」を育てることが重要と考える。 本研究では首都圏の特別支援学校(知的障害)高等部単独設置校(分校、分教室、高等特別支援学校を含む)に在籍する軽度知的障害のある生徒を対象に調査を実施して運動有能感の特徴を探った。分析対象は調査用紙の回答に記入漏れなどの不備のなかった1410人であった。調査では生徒の属性として「学年」「性別」「部活動の所属の有無」「運動やスポーツの好き嫌い」「運動やスポーツへの取組の積極性」「体育の好き嫌い」「体育への取組の積極性」を明らかにするとともに、3領域12項目で構成される「運動有能感測定尺度」を用いて生徒の運動有能感を測定した。 「運動有能感」について、5件法(5.よくあてはまる 4.ややあてはまる 3.どちらともいえない 2.あまりあてはまらない 1.まったくあてはまらない)で回答を求めた。平均値が最も高かった項目は、受容感領域の「運動をしている時、先生が励ましたり応援したりしてくれます」4.05(標準偏差1.04)であり、最も低かった項目は身体的有能さ領域の「運動の上手な見本として、よく選ばれます」2.42(標準偏差1.36)であった。 今後は生徒の属性と運動有能感の関係を明らかにして、属性の違いによる生徒の運動有能感の特徴を詳細に明らかにしたいと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は本来ならば令和3年度末終了予定であったが、全国的な新型コロナウイルス感染症蔓延の影響を受けて、当初計画より1年間延長して実施している。さらに、研究1と研究2はもっと早期に論文として特別支援教育関連および学校体育関連の学術雑誌に投稿すべきところ、前所属機関および現所属機関における新型コロナウイルス感染症に係る業務多忙化により、論文執筆の時間確保が困難な状況となっている。 研究1「特別支援学校(知的障害)の体育授業の実態調査」と研究2「特別支援学校(知的障害)の体育授業に対する教員の意識調査-体育授業の困難さに注目して-」は、研究データの分析が終了し、現在、学術雑誌への投稿準備中である。研究3「特別支援学校(知的障害)高等部生徒の運動有能感の特徴」は令和2年度に実施予定であったが、全国的に新型コロナウイルス感染症が蔓延したことで前所属機関において令和2年度内の学校等への調査が全面禁止になったことから、現所属機関において令和3年11月中旬から令和4年4月初旬の実施となった。現在、研究データ集計を終了し、生徒の属性と運動有能感との関係を詳細に分析、考察中であるが、令和5年度のできるだけ早い時期に学術雑誌への投稿を予定している。 本研究は令和3年度末で終了予定であったが、新型コロナウイルス感染症蔓延の影響を受けて研究3の実施が非常に遅れたことから、令和4年度末終了を目指して取り組んでいる。また、令和4年度が研究最終年度となることから、上記3つの研究を研究成果報告書としてまとめ、調査に協力くださった全国の特別支援学校(知的障害)に配布する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、全国的な新型コロナウイルス感染症蔓延の影響を受けて、当初計画より1年間延長して実施している。現在も新型コロナウイルス感染症に係る現所属機関の業務多忙化の影響で研究に携わる時間確保が難しい状況にあるが、3つの研究の調査データ収集が終了したことから、学会などへの発表論文執筆および研究成果報告書作成に向けて鋭意取り組んでいるところである。 研究1「特別支援学校(知的障害)の体育授業の実態調査」と研究2「特別支援学校(知的障害)の体育授業に対する教員の意識調査-困難さに注目して-」は、研究データの分析を終了し考察や今後の課題などをまとめている状況である。令和4年度中に特別支援教育関連および学校体育関連の学術雑誌に投稿予定である。研究3「特別支援学校(知的障害)高等部生徒の運動有能感の特徴」は、現在、研究データ集計を終了し、生徒の属性と運動有能感との関係を詳細に分析、考察中であるが、令和5年度のできるだけ早い時期に特別支援教育関連または学校体育関連の学術雑誌への投稿を予定している。 研究最終年度である令和4年度は、新型コロナウイルス感染症蔓延の推移を見ながら上記3つの研究をまとめて報告書として冊子化し、全国の特別支援学校(知的障害)に研究活動報告を兼ねて配布予定である。 特別支援学校(知的障害)の体育授業に関する研究は非常に少ないことから、今後は特別支援教育関連および学校体育関連の学術雑誌への投稿・掲載、調査に協力くださった全国の特別支援学校(知的障害)への研究成果報告書の配布などを通じて、特別支援学校(知的障害)の体育授業の充実の必要性を広く伝えたいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症蔓延の影響により、研究3「特別支援学校(知的障害)高等部生徒の運動有能感の特徴」の取組が遅れ、アンケート調査用紙の回収が令和3年11月中旬から令和4年4月初旬までかかってしまった。それに伴って外部委託業者における調査データ集計作業が遅れてしまったことから、令和4年度に調査データ集計費用を外部委託業者に支払う必要がある。また、令和4年度末には現在取り組んでいる3つの研究をまとめて研究成果報告書として冊子化し、研究に協力くださった全国の特別支援学校(知的障害)に配布を予定している。 これらのことから、研究3の実施に係る調査データ集計費用の外部委託業者への支払い、および3つの研究をまとめたものを研究成果報告書として作成し、全国の特別支援学校(知的障害)に配布するために、外部委託業者に印刷および製本、郵送を委託するための支払いに助成金を活用することを計画している。
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