研究課題/領域番号 |
18K10952
|
研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
越川 茂樹 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (80338433)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | アレテー / アゴーン / 遊び心 / 文脈依存性 / カーニバル性 / 流用性 / 二元性的思考 |
研究実績の概要 |
今日スポーツはその文化的な価値が認められている一方で,スポーツにおける競争という存在様態をめぐって教育的意味や可能性が問われてもいる。こうした現代の学校体育をめぐる状況に鑑み,本研究では,文献資料を解釈するにより古代ギリシアの運動競技にみられる運動理念ならびに人間観を原理的に考察することを目的としている。そしてそこにどのような教育的なるものがあり,どのような環境(条件)のもとでそれが可能となっていったのかを明らかにする ことをめざしている。 これまで,古代ギリシアスポーツにおける研究動向を把握しつつ,ホメロス世界における運動競技に関する文献解釈を行なった。特に『イリアス』における運動競技が備えていた遊戯的性格を読み解くことで古代ギリシアにおける運動競技観の一面について考察を行った。その結果,英雄の精神として一般的に語られスポーツの精神の源として今日まで脈々と受け継がれているとされる「常に勇ましく戦って他のものに抜きんでよ」の精神を披露する場である遊びの性格を備えた遊びとしての運動競技と遊び心が,古代ギリシアの人々にとっての教養として引き継がれていったという面が明らかとなった。また,ホイジンガについて,その遊びや文化の思想を論じていく中で,古代ギリシアの言語や思想をどのように取り上げ理解していたのか,それを踏まえ文化と遊びとの連関において古代ギリシアの競争をどのように理解し位置づけていたかについて考察した。その結果,ホイジンガは,ギリシア社会の文化が,遊びを基調とする競技の形式によって成り立っていたと理解していた.また,二つのものを対立させて考えること自体に潜む対の思想(二元性的思考)から派生する対抗心や競争心,あるいは生活の中のさまざまな経験において実感してきた物事の対立・対抗のありようがギリシア人の生きざまとしてごく普通であり,それが社会に根づいていたと考えていた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまで整理していた成果の一部を提出している現状である。また,現在,さらに文献を取り寄せ解釈し成果をまとめている段階にある。
|
今後の研究の推進方策 |
古代ギリシアにおける運動競技観について,ホメロス世界以後を対象に文献解釈を行う。具体的には,ピンダロスの思想にみる運動競技観について考察する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
物品費(図書費,研究環境の改善のための費用)として使用する。その理由は,前年度における資料収集のための調査旅行が不要であったことと今年度新たな文献購入及び研究環境の改善のための費用が必要となったことである。
|