本研究では,古代ギリシアの運動競技の存在様態とそこにみられる教育的内容を明らかにすることを目的とした。その結果,以下のことが明らかとなった。1)古代ギリシアにおける運動競技は,社交が深く関わっており,寛容の精神により「競い合い」と「互いの尊重」という矛盾した状況を克服してきた。2)古代ギリシアの運動競技には,市民の共同体的まとまりという意味での国家であるポリスの形成を支えた自由でありながら平等が保証されている様態を示すイソノミア(無支配)という原理を実践的に経験できる構造があった。そして運動競技に触れることにより,ギリシア人はその原理とそこから生み出される意味ある教育的内容を学んでいった。
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