研究課題/領域番号 |
18K10959
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
和坂 俊昭 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60390697)
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研究分担者 |
木田 哲夫 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 特任准教授 (80419861)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 巧緻的運動 / 手指 / 認知機能 / 脳磁図 |
研究実績の概要 |
これまでの運動によって高次脳機能を高める研究報告は、ジョギングやサイクリングといった全身を用いた持久的運動によるものである。本研究では、全身の持久的運動ではなく、局所的な運動で高次脳機能を高めることができるのかという課題に取り組む点がこれまでの研究と一線を画すものである。局所的な運動(手指の運動)は、いつでも手軽に行うことが出来るため、小児から高齢者までの幅広い年齢層に対して、高次脳機能を高める新しい神経トレーニング法となる可能性を秘めている。 本年度は、手指のどのような運動が脳の運動関連領域を活性化させるのかを明らかにするために、脳磁図を用いて手指の単純な運動と巧緻的な運動時における脳活動を比較した。単純な運動は積み木を摘まんで移動する課題であり、巧緻的な運動は積み木を摘まんで移動させる際に、積み木を180度回転させて移動する課題であった。積み木を指先で摘まんで移動させる課題では、一次体性感覚領域の活動が減少した。この結果はこれまでに報告されている運動時における体性感覚情報の抑制と一致したものである。しかし、巧緻的な運動時では、一次体性感覚野の活動が増大することが明らかになった。 これまでの報告では、運動時における体性感覚情報は、遂行する運動に関連しない反射などの筋収縮が起こらないように抑制されると考えられてきた。しかし、手指の巧緻的な運動時には、体性感覚情報が運動の制御に対して重要な働きを担っているため一次体性感覚野の活動が増大したものと考えられる。本研究の結果より、手指の運動が脳の他の領域を活性化させるのかについては、次年度以降に検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、手指の運動に関する体性感覚系の活動について、巧緻的な運動がその領域を強く活性化させることが明らかにした。この研究成果は、これまでに報告されている運動時における体性感覚領域の活動抑制と異なるものであるが、手指の巧緻的な運動時において、このような現象がみられることが手指の単純な運動との比較から判明した。この結果に関しては、現在データ解析はほとんど終了し、論文の執筆に取り掛かっているため、当初の予定通りの研究が進展しているものである。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降の研究については、一次体性感覚領域が最も活動する手指の運動課題について更なる検討を行う予定である。現在のところでは、手指の巧緻的な運動に関しては、手指の把持力を目標値に対して調整させる視覚追従課題時を検討中である。この計画と並行して、認知機能を定量化する課題も検討している。これらの準備が整い次第、手指の運動が認知機能を促進することが出来るのかについての脳波実験を行うことを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初導入を予定していた脳波解析ソフトウェアの購入が遅れたため、次年度への繰り越しが発生している。このソフトウェアに関しては、次年度が始まり次第購入する予定である。
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