本研究の目的は、運動部活動における心理欲求の充足・不満が適応感に及ぼす影響を検討することであった。大学運動部員83名(男子52名、女子31名)を対象に、自律性への欲求充足と不満、関係性への欲求充足と不満、および有能さへの欲求充足と不満の計6下位尺度からなる心理欲求の充足・不満測定尺度と居心地のよさの感覚、課題・目的の存在、被信頼・受容感、および劣等感のなさの4下位尺度からなる適応感測定尺度を実施した。 運動部活動における基本的心理欲求の充足・不満と適応感との関連を検討するために、適応感を目的変数、心理欲求を説明変数とした重回帰分析の結果、心理欲求を充足している部員ほど適応感が高いのに対して、欲求不満の部員は適応感が低いことが明らかとなった。 さらに、心理欲求の充足・不満類型と適応感との関連を検討した結果、「低充足・高不満群」の適応感が最も低いことが明らかとなり、運動部活動に対して不適応の状態にある可能性が示唆された。 以上、本研究において、運動部活動における心理欲求の充足・不満が運動部活動への適応感と密接に関連していることが示されたことから、運動部活動における心理欲求の充足・不満の程度を把握することは、運動部活動の指導の改善と充実を図るうえでの有益な一指標となりうることが示唆された。さらに、これまで、見当たらなかった運動部活動における不適応への予防のための新たなツールを提供するという意味で意義あるものと思われる。
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