立位を保った時の認知的作業パフォーマンス、および前頭前野が司る実行機能(注意・集中、判断などを調節する認知機能)、前頭前野の脳酸素化動態、循環系のゆらぎ現象および重心動揺について、暑くも寒くもない中性温度とより高温の2つの温度条件において調べて比較検討した。被験者は健康な学生7名であった。被験者は、水循環スーツを着用し、椅座位で30分間安静を保った後に座位のまま約20分間、姿勢を立位に変えて約70分間過ごした。水循環スーツの水温は30℃と40℃の場合について行った(中性温条件および温暖条件)。測定項目は、4桁と2桁の減算による暗算作業パーフォーマンス(正答率等)、実行機能(ストループ・カラー・ワードテスト(SCWT)による干渉率等)、前頭前野の脳酸素化状態(近赤外分光法)、重心動揺(単位時間軌跡長等)、平均皮膚温、指動脈で測定した脈拍数および動脈血圧の変動性、体温、眠気、疲労感、および温冷感(1(かなり寒い)から9(かなり暑い))であった。中性温条件および温暖条件において全測定時間の平均の平均皮膚温は34.2±0.6℃(SD)および35.1±0.2℃、温冷感は5.2±0.7(ふつう)および6.7±1.0(暖かい)であり、条件間の差は有意であった(p<0.05)。統計学的有意差は、前頭前野の酸素化ヘモグロビン濃度(中立温条件<温暖条件、p<0.05)や疲労感(時間の影響、p<0.05)に認められた。以上のことから、「ふつう」から「暖かい」と感じる温度環境下で立位を1時間強保った場合、脳酸素化状態に変化はなく、認知的作業パフォーマンスや実行機能は維持されることが示唆された。
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