本研究の目的は、骨盤底筋群の随意収縮が可能な者と困難な者の脳機能の違いを調査し、さらに骨盤底筋群の随意収縮をトレーニングして、随意収縮が可能になった後の脳の活動と収縮ができなかったときとの違いを比較分析することである。 2022年度は実験プロトコルを変更し、NIRS(近赤外線分光法)を使用して脳活動を計測した。脳活動は、酸化ヘモグロビンの変化を通じて脳血流量の変化として評価した。健常若年女性12名を対象とし、骨盤底筋群を随意収縮と手指の曲げ伸ばし動作時の酸化ヘモグロビンの違いを比較検討した。また、そのうちの1名について、骨盤底筋群の収縮トレーニングを行った後、骨盤底の挙上量の増加を確認した後に、酸化ヘモグロビンを計測し、トレーニング前後で比較した。トレーニング内容は、骨盤底筋群が呼吸と連動して機能する点に着目した。トレーニング開始前に呼吸運動が円滑に行われているかを体表面の肋骨の動きを触診することで確認した。胸郭の運動が不十分であったため、肋骨の可動性を改善するアプローチを行い、呼吸運動をしやすいように調整した。その後、対象者が呼吸運動を行いやすくなったこと確認をし、体幹のインナーマッスルを使用した呼吸訓練を実施して骨盤底筋群の活動を促した。その後、超音波診断装置を使用して経腹から膀胱を撮像し、膀胱底の位置の変化から骨盤底筋群の活動が改善されたことを確認し、NIRSによる酸化ヘモグロビンの計測を行った。 NIRSによる計測の結果、「骨盤底筋群の収縮」と「手指の握り動作」の2つの異なる課題による脳血流量の違いは認められなかった。また、骨盤底筋群のエクササイズ前後による脳血流量についても違いが認められなかった。
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