研究課題/領域番号 |
18K10968
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研究機関 | 東京国際大学 |
研究代表者 |
麓 正樹 東京国際大学, 医療健康学部, 教授 (40339180)
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研究分担者 |
碓井 外幸 東京国際大学, 人間社会学部, 教授 (60389822)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 力の抜き / 3次元動作解析 / 筋電図 / 脳波 |
研究実績の概要 |
2022年度は新型コロナウィルス感染症拡大の影響が少なくなり、徐々に実験実施における制約も減少してきた。効率的で素早い移動動作には、力の抜き(筋活動の減少)が含まれている可能性が示唆されているが、報告は少ない。剣道や空手道では、前方への鋭い踏み込みとともに攻撃技を繰り出す踏み込み動作が移動動作として行われ、その速度や力強さは勝敗に大きく影響する。無線筋電図センサと光学式モーションキャプチャを用いた我々のこれまでの研究において、踏み込み動作開始直後に、前脚大腿部筋電図活動が休止し、その間に腰部垂直方向の変位において下降が確認された。腰部は下降のピーク後にその状態をわずかに維持した後に上昇に転じ、その途中で攻撃(剣道の面打ちや空手刻み突き)のインパクトがあった。この筋電図の休止と腰部の下降を効果的に獲得するための方法に着目し、後足を段差に置いた状態で踏み込み動作を行わせ、その有効性を検討したところ、段差は腰部の下降をより容易に行えるように導く可能性が示唆された。2022年度は、腰部の下降を導く、踏み込み動作に伴う前脚の力の抜きが、脳の運動準備的な活動に含まれるかどうかを調べるために、脳波を用いて、行われる運動の準備状態を反映する運動関連脳電位(MRCP)の記録を行った。空手の刻み突きの踏み込みに伴う、前脚外側広筋(VL)の筋電図活動の消失に同期させて脳波を加算平均した結果、中心部優位に明瞭なBereitschafts potential (BP)とnegative slope (N’s)が観察された。また、BPとN’sの開始時点とN’sの振幅については、後脚VLの筋電図活動増加開始で加算平均した場合とは異なる傾向があった。これらの結果は、腰部の下降を導く前脚の筋活動の休止が、脳の準備的な活動に含まれる可能性を示唆すると考えられるが、今後の詳細な検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2022年度は、研究室における実験の制限がより減少してきたが、被験者が十分に集まっていない。本年度の実験によって、空手の熟練者の踏み込み動作を行うと、踏み込み開始前に脳波の運動関連脳電位が得られた。これらの結果は、前脚の力の抜きに伴って起こる腰部の下降が、脳の準備的な活動に含まれる可能性を示唆するが、その詳細は2023年度の本格的な研究によって明らかにしたい。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は2022年度に行う予定であった、非熟練者での測定を増やし、前脚の筋電図活動の休止と腰部下降について、熟練者と非熟練者の比較ができるようにしたい。また、非熟練者の踏み込み動作の獲得について、段差利用によるトレーニング効果の影響についても検討したい。さらに、2022年度の予備的な測定によって、踏み込み動作開始時の前脚の筋活動減少に同期させて脳波を記録すると、運動関連脳電位が得られたため、被験者数を増やして詳細な解析を行うことにより、踏み込み動作開始に向けた脳の準備的な活動についても検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症拡大による制約は大きく緩和されてきたが、被験者の召集が順調に進まず、実験実施が予定通り行えなかったことが主な原因としてあげられる。2023年度は、研究内容についての実験と解析を本格的に進めるための消耗品使用を予定している。
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