研究実績の概要 |
本研究の目的は,継続的な有酸素性運動に伴う認知-運動制御機能の効果が,①どのような運動強度や快適感情でもたらされるのか,②全身持久性体力との関連性がどうなっているのかについて,反応時間,事象関連脳電位,ストレス指標(唾液アミラーゼ),快適感情尺度を用いてその機序を明らかにすることである。本年度の検討課題は,認知-運動制御機能を一過性に活性化させる有酸素性運動の強度・様式を明らかにすることであった。対象者は健常成人 15 名(男性12名,女性3名)であった。有酸素性運動は自転車エルゴメーター(232CXL, Combi)による自転車漕ぎを用い,3条件の運動強度による検討を行った(自己設定強度, 被験者自身が負荷と回転数を自由に設定(20 分間);中等強度, 50-60%VO2max 強度・50 rpm(20 分間);高強度インターバル, 85%VO2max 強度・50 rpm(90 s 高強度 + 60 s 低強度 50Wを4セット))。運動前後,運動後 30 分に左右選択 Go/NoGo 反応時間,唾液アミラーゼ, 感情尺度短縮版(MCL-S.2)を計測した。その結果,運動後の快適感情は全ての条件で改善されたが(期間の要因:0.47, 1.55, 1.05),唾液アミラーゼは高強度インターバル条件において有意に高くなった(高強度:26, 34, 23 kIU/L)。一方,Go/NoGo 反応時間は,高強度インターバル条件で有意な改善を示したが(285, 272, 276 ms),その他の条件では有意差は認められなかった(自己設定:281, 283, 282 ms;中等強度:288, 289, 284 ms)。これらの結果より,高強度インターバル運動は,ストレスはかかっているが,脳の実行・抑制機能を一過性に高めることが示唆された。
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