研究課題/領域番号 |
18K10970
|
研究機関 | 植草学園大学 |
研究代表者 |
遠藤 隆志 植草学園大学, 発達教育学部, 准教授 (80510594)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | ニューロモデュレーション / 中枢性疲労 / 経頭蓋直流電流刺激 / 運動パフォーマンス / 皮質運動野 / 運動制御 / 疲労回復 |
研究実績の概要 |
持続的な高強度運動において脳などの神経系を要因とした中枢性疲労は発現し、運動後もすぐに回復せずに脳の興奮性の低下などが継続される。この運動後も継続される疲労ならびに中枢性疲労の生理的および機能的意義、およびその効果的な回復方法については未解明である。そこで、近年、脳を微弱な直流電流で刺激してその興奮性を変化させることで運動機能に有益な効果が実証されているニューロモデュレーションを高強度運動後の回復期に用いて、皮質運動野の興奮性の変化および運動パフォーマンスの回復について検証し、運動終了後も継続する中枢性疲労の生理的および機能的意義を解明することを目的とする。 本年度は、詳細なペダリングパフォーマンスの計測が可能な自転車エルゴメータを導入し、高強度運動後の運動パフォーマンスの変化動態について詳細に調べた。30秒間全力ペダリング運動もしくは10kgのウェイトジャケットを装着してのスクワット(20回を3セット)を行い、これらの15分間の休息(座位安静)後に30秒間の全力ペダリング運動を行い、最大ペダリングパワー、疲労因子(%)、最大トルク角度、左右トルク比などの詳細なペダリングパフォーマンスについて計測した。運動後の休息時間は、我々がこれまで経頭蓋直流電流刺激によるニューロモデュレーションで成果をあげている15分間とした。その結果、最大ペダリングパワーや疲労因子、左右トルク比は運動後の15分間の休息で完全に回復し、有意な変化が認められなかったが、最大トルク角度は疲労課題後に変化する傾向が認められ、中枢性疲労の影響の可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの研究において、詳細なペダリングパフォーマンスの計測可能な自転車エルゴメータを導入し、疲労課題を決定するために高強度運動後の詳細なペダリングパフォーマンスの変化傾向の検証を行ったが、実験で用いた負荷強度が低かったために運動パフォーマンスの変化が少なく、回復効果の検証に用いる疲労課題の決定について課題を残した。しかしながら、高強度運動後のペダリングパフォーマンスの変化傾向を把握することができたなど、十分な予備実験をすることができている。また、経頭蓋直流電流刺激によるペダリング運動に対するニューロモデュレーション効果については、共同研究において成果をあげている。以上のことより、研究全体の進捗状況および目的の達成度としては、やや遅れていると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究において、高強度運動後の詳細なペダリングパフォーマンスの変化傾向を把握することができたが、ニューロモデュレーションによる疲労の回復効果を検証するにはパフォーマンスの変化が少ない状況であるため、本年度は、疲労課題の負荷強度を上げて、パフォーマンスの低下をより大きく引き起こすことができるようにプロトコールに変更を加える。疲労課題において大きなパフォーマンスの変化の見込める伸張性筋収縮を用いることも検討している。また、高強度の定電流刺激装置を導入して、筋を刺激する単収縮外挿法による中枢性疲労の計測も行い、高強度運動後の中枢性疲労の変化についても明らかにする。疲労課題のプロトコールの決定後、高強度運動後の休息時間において、経頭蓋直流電流刺激装置を用いて陽極刺激、陰極刺激、および疑似刺激のいずれかを与え、回復期におけるニューロモデュレーションがペダリングパフォーマンスに及ぼす影響について検証する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
定電流電気刺激装置を導入するためには、交付額が少なかったために前倒し請求をしたが、この研究機材を用いる研究の遂行まで至らずに購入をしなかったこと、および旅費および人件費については別の研究費から捻出できたため。定電流電気刺激装置については本年度に購入する予定である。
|