持続的な高強度運動において発現する脳などの神経系を要因とした中枢性疲労は運動後もすぐに回復せずに脳の興奮性の低下などが継続されるが、この生理的および機能的意義、および効果的な回復方法については未解明である。そこで、近年、脳を微弱な直流電流で刺激してその興奮性を変化させることで運動機能に有益な効果が実証されているニューロモデュレーションを高強度運動後の回復期に用いて、運動パフォーマンスならびに中枢性疲労の回復について検証し、運動終了後も継続する中枢性疲労の生理的および機能的意義を解明することを目的とする。 本年度は、高強度運動後の経頭蓋直流電流刺激によるニューロモデュレーションがその後の中枢性疲労の回復に与える影響について検証を行った。両脚による最大努力での膝伸展(15回×8セット)による高強度運動を行い、その後の回復期で被験者の頭頂部および右前頭眼窩上部にラバー電極を貼付し、頭頂部が陰極になる経頭蓋直流電流刺激を与えた(2mA、15分間)。また、電極を貼付し実際には最初の30秒間しか刺激を与えない疑似刺激条件も行った。これらの高強度運動および経頭蓋直流電流刺激の前後において、最大膝伸展力を計測した。この最大筋力発揮中に大腿四頭筋へ電気刺激を与え、得られた外挿単収縮と安静時単収縮力より筋の随意的動員度を算出した。その結果として、筋の随意的動員度の変化は両刺激条件間で差が認められなかったことより、大腿四頭筋における中枢性疲労の回復についてはニューロモデュレーションの効果を確認することはできなかった。ゆえに本研究で用いたニューロモデュレーションでは、大腿四頭筋の随意的動員度の変化以外の要因で運動パフォーマンスが回復する可能性が考えられた。
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