研究課題
健常成人を対象に両下肢の計7カ所(左右大腿部,左右内腿部,左右足の甲,仙骨)にワイヤレス慣性センサー(MVN ,Xsens社)を装着し,平地を10m自由歩行中の歩行動作を3D計測した.被験者は自由歩行中は一定の任意速度を保った.慣性センサーから得られた座標データに基づいて被験者ごとにアバターを作成し,両足の歩行比(歩幅/歩行率)を解析した.視覚刺激では,歩行中の照度を遮光ゴーグルによって8段階(1,3,5,13,34,77,120,289 Lux)に分けて設定した.照度を徐々に低下させる明暗条件と照度をランダムに変化させるランダム条件での歩行比について検討した.また順番効果について検討するため,明暗条件⇒ランダム条件⇒明暗条件と,ランダム条件⇒明暗条件⇒ランダム条件と順序を入れ替えて実施した.明暗条件とランダム条件間は15分のインターバルを設定した.照度が徐々に低下すると両足の歩行比が低下し,照度がランダムに変化すると両足の歩行比は一定となった.このことから,歩行動作は視覚情報に応じて歩行比が変化する順番効果と,ランダムな視覚情報に対して歩行比が一定となる2種類の適応機能があることが示唆された.ランダム条件後に明暗条件を実施すると,歩行比の低下が抑制された.このことから,ランダムな視覚刺激によって歩行比がいったん一定となると,その影響は15分後も持続することが示唆された.以上のことから,歩行動作は視覚情報へ適応機能を示すが,視覚条件に応じて適応方法が変化することが明らかになった.
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Brain and Development
巻: 45 ページ: 39~48
10.1016/j.braindev.2022.09.001