運動トレーニングに付随して生じる生体応答の適応に対し,トレーニングに伴う静脈血管伸展性の増大は関与するのか否かを明らかにするために,縦断的な運動トレーニングを実施することで得られる血圧応答の適応に対する静脈血管伸展性増大の関与を検討した. 被験者は,15名の健康な若年成人とし,トレーニング群(TRA:n=7)とコントロール群(CON:n=8)に分けた.TRA群は,持久性運動トレーニング(最大酸素摂取量の40%および80%に相当する自転車運動を2分間ずつ交互に行う間欠負荷運動,1回40~60分,週3回)を8週間実施した.CON群は通常の生活を8週間過ごした.8週間の前後で,安静時の下腿部静脈血管伸展性と最大酸素摂取量,さらには一過性自転車運動時の循環応答(収縮期血圧,拡張期血圧,平均血圧および心拍数)を測定した.本研究で得られた結果は以下のとおりである.8週間の運動トレーニングにより,下腿部静脈血管伸展性および最大酸素摂取量の増大,一過性運動時における収縮期血圧と心拍数の低下が認められた.一方で,一過性運動時における拡張期血圧および平均血圧はトレーニング前後で変化はみられなかった.トレーニングに伴う下腿部静脈血管伸展性の増大と運動時収縮期血圧の低下の間に有意な相関関係は認められなかった.以上の結果から,健康な若年成人において,8週間の間欠負荷運動トレーニングは,下腿部静脈血管伸展性増大および運動時の収縮期血圧低下を生じさせるが,血圧応答の適応に対する静脈血管伸展性の増大の関与はほとんどみられないことが明らかとなった.
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