研究課題
食餌・肥満が薬物動態に影響を及ぼしている可能性は古くから指摘されているが、十分な検証は行われておらず、食餌・肥満による腸内細菌叢の変化がその代謝産物を介して薬物動態に影響を与え、有害事象発症に関与している可能性が疑われている。これまでの動物実験で、高脂肪食給餌とバンコマイシン経口投与が抗リウマチ薬メトトレキサートによる消化管傷害を増悪させ、大豆由来蛋白質給餌とω-3脂肪酸経口投与が軽減させるが、肥満は影響を与えないことを確認した。そこでこの研究では、次世代シークエンサーで腸内細菌叢を解析すると同時にメタボローム解析を行うことで、メトトレキサートによる薬剤誘発性消化管傷害を防ぐ腸内細菌群と代謝産物を探索・決定する。メトトレキサートの消化管傷害に保護的な作用をもつ腸内細菌が存在している可能性があると考えられたが、腸内細菌叢解析とメタボローム解析の結果では、大豆由来蛋白質給餌群と通常食給餌群に類似性が認められた。腸内細菌叢解析やメタボローム解析からは、食餌による腸内細菌叢・腸内代謝産物などの腸内環境の変化がメトトレキサートによる消化管傷害増強に関与していることが示唆された。候補となる腸内細菌や代謝産物がメトトレキサートの消化管傷害を防ぐことが可能かどうか確認してみたが、単独の腸内細菌や代謝産物は同定されなかった。このことは、複合的な腸内細菌群や代謝産物群がメトトレキサートの消化管傷害を防いでいることを示唆している。
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