本研究の目的は、就労者(特にデスクワーカー)の座位行動の実態・関連要因を詳らかにし、それらの研究成果を基に包括的介入プログラムを開発・施行し、その効果を明らかにすることであった。本年度は介入プログラムの本試験を行うことを予定していたが、新型コロナウイルス(コロナ)蔓延に伴い、本試験を実施することが困難となった。しかし、コロナ収束後の本試験再開に向けて、対象企業と実施時期・方法について議論を重ねた。また、わが国の就労者によくみられる座位行動パターンを探索するために、40~64歳の229名のデスクワーカーを対象に、加速度計装着データから勤務日・非勤務日別に午前・午後・夜間の座位時間を算出し、その日内変動パターンを基に対象者をクラスター分析にて類型化した。その結果、勤務・非勤務日に関わらず、全ての時間帯で座位時間が長い「Stable Sedentary」に47%の対象者が分類された。また、勤務日のパターンは「Stable Sedentary」と類似しているものの、非勤務日の朝のみ活動的な「Off-morning Break」には27%、非勤務日の昼のみ活動的な「Off-afternoon Break」には8%が分類された。最後に、18%が分類された「Evening Sedentary」は3クラスターとは全く異なり、勤務・非勤務日ともに夜間の座位時間が長く、女性、パートタイム就労者などの特性が認められた。本検討から、デスクワーカーの約8割が就業日において一日中「座りっぱなし」であり、職場全体での座位行動是正プログラムは、大多数のデスクワーカーに好影響を与え得ることが確認できた。また、プログラム内のメッセージやアドバイスには、類型化された対象者層の家庭的・社会的特性に合わせることにより介入の効果を広げられるかもしれない。今後は、コロナ終息後に本試験を実施していく。
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