研究実績の概要 |
加齢とそれに伴う身体機能低下の中でも特に骨格筋肉減少症(サルコペニア)はADLを低下させる要因として重要である。サルコペニアはインスリン抵抗性と関連があるともされ、サルコペニア肥満も増加の一途となっている。またサルコペニアの成因として近年オートファジー調節機構が関与することが報告され注目されつつある。我々はサルコペニアとメタボリック症候群の両者を調節し得るシステムとしてのオートファジーに着目し、非受容体型チロシンキナーゼFynがメタボリック症候群に関与するだけでなくオートファジーを調節し、その損耗に関係する事を主にトランスジェニックマウスを用い報告した(Cell metabolism 2010, Cell Rep. 2012)。しかしこれらは非生理的な検討であったため、さらなる検討をすすめ、①マウスC2C12筋管細胞におけるIL6-Fyn依存性のSTAT3のリン酸化とそれに伴うオートファジー調節②除神経マウスモデルと後肢懸垂マウスモデルにおけるFyn-IL6-STAT3によるオートファジー調節機構を本学会で報告してきた。しかしこれら解析は野生型マウス(WT)を用いたものであり、これら調節機構に対するFynの関与に関しての解析は不十分と考えFynのノックアウトマウス(FynKO)を用いてさらなる検討を行った。その結果、①FynKOではWTで生じる後肢懸垂による筋萎縮が生じなかった②FynKOでは後肢懸垂マウスの筋肉ではWT で認めるSTAT3の発現/リン酸化の上昇を認めなかった③さらにコルヒチンを腹腔内投与することで検討されるオートファジー活性にても活性低下を認めなかった。これらの結果はFynがメタボリック症候群のみならずサルコペニアの成因にも関与している事を強く示唆すると思われ、サルコペニア肥満の病態解明、治療法の開発につながる可能性があると思われる。
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