研究課題
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)では、肝臓が担う脂質や糖などの栄養代謝の異常を介して、動脈硬化を悪化させ、心臓や血管にまで重篤な悪影響を及ぼす。本 研究では、肝臓疾患であるNASHと心臓・血管疾患をつなぐ「臓器連関」を解明し、効果的な先制的治療法を見出すため、肝臓や血管などに発現している肝臓X受 容体(LXR)に着目した。このLXR活性は一度形成されたアテローム性脂肪沈着巣からコレステロールを引き抜き、動脈硬化を退縮させる革新的な効果が期待されて いるが、脂質合成系遺伝子(SREBP1c)も誘導して、肝臓の脂質沈着をさらに悪化させる欠点がある。本研究では、この欠点を克服するため、目的1:胆汁酸による SREBP1c活性の抑制効果と目的2:SREBP1cを活性させないLXR活性の新規リガンド候補であるウアバゲニンの効用について、申請者らが所有する特殊なNASH-心筋 梗塞発症モデル(SHRSP5/Dmcrラット)を使用して検討する。2018年度は、本研究で使用しているSHRSP5ラットの胆汁酸基礎代謝について調べ、血中および肝臓中 の胆汁酸上昇にともなって、肝線維化、動脈の脂質沈着、心筋梗塞が悪化することを証明し、Int J Exp pathに掲載された。2019年度は、予定通り、東北大学よ りウアバゲニンの提供を受け、NASHにおける肝臓線維化、動脈における脂質沈着が改善された。2020、21年度は、ウアバゲニンが保護効果と治療効果のどちらを示すかを検証するため、動脈硬化、心筋梗塞を誘発するL-NAMEの投与時期と同じ、もしくは遅らせて投与した群を用意した。その結果として、動脈硬化の発生後においても、ウアバゲニンは動脈の脂質沈着を退行させたことがわかった。
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Biochimie
巻: 197 ページ: 49-58
Biomedicine & Pharmacotherapy
巻: 139 ページ: 111633