研究課題/領域番号 |
18K10996
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研究機関 | 青森県立保健大学 |
研究代表者 |
今 淳 青森県立保健大学, 健康科学部, 教授 (60271798)
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研究分担者 |
井澤 弘美 青森県立保健大学, 健康科学部, 准教授 (20315534)
乗鞍 敏夫 青森県立保健大学, 健康科学部, 講師 (40468111)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 蒲黄 / 創傷治癒 / 古事記 / 花粉 / 皮膚 / 蒲 |
研究実績の概要 |
平成31年度・令和元年度は,平成30年度の結果を踏まえつつ,遺伝子及びタンパク質の蒲黄による発現制御機構の詳細の解析を開始した。創傷治癒機構は,炎症期,増殖期,組織再構築期を経て,損傷部に肉芽組織が形成されて細胞外マトリックス成分で充填され,次いで上皮化が行われて完了する。我々は既に,蒲黄は創傷治癒機構の初期段階である炎症期,増殖期に強く作用することを明らかにし,その一方で,組織再構築期を制御する遺伝子を解析した結果,真皮コラーゲンの発現は著明に抑制し,以上から,蒲黄は,創傷治癒機構の炎症期,増殖期など初期から中期にかけて強く作用し,後半の組織再構築期には抑制的に作用している可能性を見出していた。そこで最初に,真皮コラーゲンの発現変動をリアルタイムPCR,ウェスタンブロット等で解析した。その結果,各種真皮コラーゲンの発現は,蒲黄によって遺伝子レベル及びタンパク質レベルで何れも強い抑制を受けていた。しかも蒲黄の濃度及び反応時間依存性に抑制していた。一方,真皮の細胞外マトリックス主要成分のデコリンに関しては,遺伝子及びタンパク質のレベルで発現は促進していた。皮膚の強い損傷は瘢痕を残して治癒するが,この主要な原因はコラーゲンの過剰発現である。それに反してデコリンは瘢痕形成を抑制するものである。従って,真皮コラーゲンの発現が抑制したこと,デコリンが促進したことを考え合わせると,蒲黄は瘢痕形成を抑制しながら創傷治癒を促進している可能性が示された。そこで次にこの発現促進が転写レベルで行われていることを解析するため,現在は,各遺伝子のプロモーター領域の組み込まれたベクターを構築し,大量精製を行い,発現の元締め部分である基本プロモーター,蒲黄による応答配列を解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
蒲黄により発現が著明に促進及び抑制する遺伝子を同定し,その制御機構の詳細を解析した。また,現在はその転写調節機構の解析も開始した。発現が蒲黄によって新たに出現或は消失する遺伝子(マスター遺伝子である可能性を有する遺伝子)も見出した。以上から,かなりのデータが得られ,概ね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,真皮コラーゲン遺伝子,デコリン遺伝子の蒲黄による転写制御機構を明らかにする。現在精製している。各遺伝子の各種阻害実験やプロモーター領域の解析により,蒲黄の応答配列と転写因子も検索する。またデコリンが,皮膚の創傷治癒を促進する遺伝子,特に古事記の記載の通り皮膚の再生させるマスター遺伝子であるかを解析する。具体的には,デコリン遺伝子の発現ベクターを構築してマウス生体皮膚の損傷部に導入し,実際に傷が跡形残さずに完全に再生できるか確認する。また蒲黄によって新たに発現が出現,或は出現した遺伝子も見出しており,ここにもマスター遺伝子が存在している可能性が高いため,この発現制御機構の解析も開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成31年度・令和元年度には,蒲黄による創傷治癒関連遺伝子及びタンパク質の発現変動,遺伝子導入実験,転写機構の解析を行った。その結果,解析用の試薬を多数購入したが,その際に,質的には同等であり,且つ,当初の予定よりも廉価な試薬が新たに見つかり,そのために未使用額(5円)が生じた。データを確実なものにするために,今後も同じ解析を繰り返し行う必要があるために,未使用額は次年度以降の経費に充てることにしたい。
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