研究実績の概要 |
本研究課題は、動脈系化学受容器である頚動脈小体と本態性高血圧の関連性をシナプス可塑性の面から解明することを目的に取り組まれてきたが、今年度はまず、形態学的検討としてラット頚動脈小体を対象に小胞性モノアミントランスポーターに対する抗血清を用いた免疫組織化学的観察を行い、小体内のチロシン水酸化酵素陽性であるドーパミン陽性細胞とドーパミンβ水酸化酵素陽性であるノルアドレナリン分泌細胞にどの様に局在するかを調べ、小胞性モノアミントランスポーターの関与について考察を加えた(Acta Histochem. 2020, 122(3):151507.)。また、生理学的検討として、頚動脈小体を直接電気刺激することにより血圧変動が誘導される研究についても継続しているが、今年度はコロナ禍の影響により共同研究の実施に支障が出たため、来年度以降研究を継続する予定である。一方、シナプス可塑性の数理的解析は順調に進捗が認められた。前シナプスの入力パターン、細胞内カルシウム減衰時定数およびバックグラウンドシナプス活性に焦点を当て、刺激頻度依存性シナプス可塑性を数理解析し、ニューロンが同じ入力レートを受け取ったとしても、前シナプスの入力パターン、細胞内カルシウム減衰時定数およびバックグラウンドシナプス活性によって入力周波数以外の要因が発火周波数依存シナプス可塑性に関与することを示唆し、シナプス荷重が異なることを確認した(Scientific Reports 10, 13974, 2020.)。また、バックグラウンド活性にガウスゆらぎを与えることによりシナプス可塑性のoutputが異なることを見出しており、さらに研究を進めている。これらの結果は、入力周波数以外の多くの要因が発火周波数依存シナプス可塑性さらにはニューラルコーディングにも関与することを示唆した。
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