研究実績の概要 |
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、食生活と密接な関わりのある生活習慣病の一つであるが肝癌といった深刻な疾患に進展するリスクが高い。しかし、NASH発症・進展に対する治療法は明確に確立されておらず、疾患メカニズムの解明は喫緊の課題である。我々は、細胞内のタンパク質が糖代謝中間体のグリセルアルデヒド(GA)と非酵素的に反応して毒性終末糖化産物(toxic advanced glycation end-products, TAGE)を生成することと、NASH発症・進展が関連することを見いたし、新規のNASH発症メカニズムを提唱している。本研究ではTAGEに加え、疾患部位で観察される酸化ストレス損傷に注目し、細胞内のTAGE蓄積により活性酸素(reactive oxygen species, ROS)が上昇するのではないかと考えた。この仮説を証明するためにTAGEとROSの関係と、酸化ストレス上昇の原因について詳細な解析を行った。 令和2年度はTAGEとROS産生の関係について解析を進めた。肝実質細胞内にTAGE蓄積が引き起こされるin vitroでの解析系を用いた。肝実質株化細胞HepG2にTAGE前駆体のGA処理を行った結果、ミトコンドリア異常と相関してROSの産生が引き起こされることを明らかにした。また、細胞内における酸化ストレス応答に着目して研究を進めた結果、Nrf2下流のストレス応答遺伝子の発現量は上昇しており、細胞内においてGAが引き起こすストレスに対して防御機構を働かせていることが分かった。
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