研究実績の概要 |
パーキンソン病においては、中脳黒質のドーパミン神経細胞が選択的に障害される。その理由として、カテコールアミン(特にドーパミン)の過剰合成と、ドーパミン代謝の結果生じる3,4-Dihydroxyphenylacetaldehyde (DOPAL)等の代謝産物の過剰産生による細胞障害が疑われている。一方、コーヒー等に含まれるカフェインは、本症の発症リスクを低下させることが疫学調査から示されているが、アデノシンA2A受容体の関与が報告されているのみであり、そのメカニズムは不明である。そこで、ドーパミンと類似構造を有するカフェイン等のキサンチン誘導体が、ドーパミン代謝に及ぼす影響(代謝攪乱作用)に着目して解析を開始した。
具体的には、ラット副腎髄質由来PC12D細胞に、ロテノンを添加してミトコンドリア障害を誘発することにより、神経細胞障害のモデル細胞を作製した。このモデル細胞に、種々の食品成分に含まれるキサンチン誘導体およびその他の物質を添加して培養を継続することで、カテコールアミン(ドーパミン)合成経路およびその代謝経路に与える影響、特にミトコンドリア障害を誘発する物質であるDOPAL(DA代謝物)の産生に与える影響を解析した。
食品成分であるカフェインを代表とするキサンチン誘導体以外にも、抗酸化活性を有するある種のフラボノイドが極めて強いDOPAL産生抑制効果をすることを発見した。また、NT5DC2という新規タンパク質がカテコールアミン合成系、特にチロシン水酸化酵素のSer残基のリン酸化制御を介して酵素活性調節に関わっている可能性を発見した。一方、上記のDOPAL産生抑制効果を有する食品成分がNT5DC2に直接影響を与えるかどうかを明確にすることが出来なかった。
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