研究課題/領域番号 |
18K11011
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
石川 祐子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, ユニット長 (40353940)
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研究分担者 |
後藤 真生 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, 上級研究員 (30302590)
若木 学 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, 研究員 (50710878)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 酸化ストレス / 免疫老化 / 抗酸化物質 / 酸素ラジカル吸収能 / 一重項酸素消去能 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、摂取カロリーの過多(栄養過剰状態)等の食餌性酸化ストレスや、加齢等により生体内に蓄積する酸化ストレスが免疫老化に与える影響を明らかにし、免疫老化の抑制や機能回復を可能とする栄養摂取条件の確立を目的としている。 そこで、本年度は加齢に伴う免疫系の変化と、抗酸化物質を豊富に含有する農産物を混餌投与した際の免疫系への影響を検討した。 抗酸化物質を豊富に含有する農産物として、親水性酸素ラジカル吸収能(H-ORAC)の高いイチゴを選び、通常餌(AIN-93G精製飼料)およびイチゴの凍結乾燥粉末を4%(W/W)混餌した試料(AIN-93Gベース、コーンスターチとの置き換え)を18週齢のDO11.10マウス(卵白アルブミン(OVA)に特異的なT細胞を発現するマウス)に12週間投与し、摂餌量、飲水量、体重のモニタリングを行った。投与期間中の摂餌量や体重には有意な差は認められなかった。投与終了後に解剖し、全身性免疫担当細胞として脾臓細胞を調製し、ex vivoでの抗原特異的免疫応答性を評価した。これまでの結果では加齢に伴い抗原特異的な免疫応答性はいずれも低下することが認められていたが、イチゴ混餌飼料の投与により、抗原特異的なIgG1、IgA抗体の産生量やIL-2、IFN-γ等のサイトカイン産生量、脾臓細胞増殖活性のいずれにおいても免疫応答性の回復傾向が認められた。 現在、同時にサンプリングした血液、肝臓および腸管における酸化脂質マーカー等についての測定を行っており、生体内酸化ストレスと上記の免疫応答性の関係を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H30~31年度の計画では、栄養過剰状態による免疫機能の低下と免疫老化に共通する機序の探索として、高脂肪、高糖質等の栄養過剰な餌を幼若期より摂取させたマウス、および通常餌を摂取させた加齢マウスを作成し、それぞれから調製した全身性免疫細胞(主に脾臓細胞を対象)の免疫応答性を指標として、栄養過剰状態による免疫応答性の低下と加齢による免疫応答性の低下(免疫老化)に共通する免疫細胞の機能変化を探索することとしており、加齢による免疫応答性の変化と酸化ストレス抑制能を有する抗酸化成分の投与の影響を明らかにしたことから、ほぼ予定どおり進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、栄養過剰状態および加齢に伴う免疫機能の低下との関連性を明らかにするため、課題担当者らが開発した、加齢に伴い変動することが明らかになっている免疫老化指標を中心に動物モデルにおける検証を進める。また、解糖系由来の酸化ストレスと免疫老化との関係を明らかにするため、若齢マウスから採取した免疫細胞を培養し、様々な栄養成分に暴露したときの免疫系への影響を明らかにする。また、この時に抗酸化物質が共存することで、栄養成分等の添加により変化した免疫応答性にどのような影響が生じるかを酸化ストレスとの関係を中心に解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題では、栄養摂取状態だけでなく、加齢による免疫応答性の変化についても検討を行うことから、本年度から開始した動物実験のうち、長期飼育を必要とする項目については、本年度内に終了せず、次年度に評価測定を行うものが生じている。そこで、本年度使用予定額の一部を次年度に繰り越し、分析試薬の購入等に充てる。
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