本研究は、長時間座位が主に下肢の血管機能(動脈・静脈)に及ぼす影響を検討しようとしたものである。2021年度は、3時間の座位中に自重スクワット運動(20分毎に1分間の運動介入)を行うことで、動脈機能にどのような影響を及ぼすかを20名の成人男女を対象に検討した。動脈硬化指標(Arterial stiffness index: ASI)は、上肢、および下肢個別に評価した。さらに、近赤外線分光法により反応性充血時の組織酸素飽和度の曲線下面積を末梢血管拡張反応の指標とした。座位中、自重スクワット運動以外は、上下肢とも安静を保つようにした。 その結果、運動介入により下肢のASI、および末梢血管拡張反応は改善されたが、非介入により悪化した。上肢のASIは、介入・非介入に関わらず悪化した。以上のことから、若年者であっても、数時間の座位により動脈硬化指標は一時的に悪化する可能性があるが、自重運動により動脈硬化指標の悪化は抑制できることを示唆している。 上記の2021年度の成果に加え、3ヶ年の研究計画全体を通じて以下のようなことが明らかになった。 1)3時間の座位中、弾性ストッキングを着用することで、下肢への静脈貯留を軽減することができた。しかし、ストッキング着用だけでは動脈機能の指標の一つである血管内皮機能には影響を及ぼさなかった。 2)3時間の座位中、運動介入することで、血糖値の上昇を抑制することができ、さらに座位中の血糖値の増加は、上腕―足首脈波伝搬速度と正の相関関係が認められた。
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