研究課題/領域番号 |
18K11014
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
福住 昌司 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 准教授 (10750002)
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研究分担者 |
櫻井 勝康 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 助教 (70507920)
斉藤 毅 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 助教 (80609933)
入鹿山 容子 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 研究員 (90312834)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | オレキシン |
研究実績の概要 |
メタボリックシンドローム、肥満は循環器疾患などの合併症により健康寿命を短くし、大きな経済的損失である。近年の社会問題である睡眠不足や不規則な睡眠による生活リズムの破たんが、代謝リズムを含めた生体リズムの破たんへとつながる。したがって代謝リズムを直接的かつ効果的に整える手段が求められている。我々はオレキシン受容体作動薬:YNT-185の末消投与が高脂肪食負荷による代謝異常を抑制することを発見した。オレキシンシグナリングは日内変動を示し、生体リズムの発現・制御に関わっている。これらのことから、生体リズムに則した脳内オレキシンシグナリングの活性化は代謝リズムを整える可能性が考えられた。本研究では、高脂肪食負荷による代謝リズム異常を示すマウスにYNT-185を異なる時間帯で投与し、抗肥満効果を指標として時間依存的な効果の違いを検討した結果、投与のタイミングによりその抑制効果が異なることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
野生型マウスに対し高脂肪食を1週間与え、同期間に一日一度ZT6に、YNT-185 40 mg/kgあるいは対照溶媒を、マイクロインジェクターを用いて腹腔内投与した。さらに7日間、高脂肪食条件下において体重および摂食量を測定した結果、YNT-185には体重増加の抑制作用が認められた。また、これに伴い摂食量の減少が観察された。投与期間終了後に組織を回収し、重量を測定したところ、肝臓、腓腹筋、褐色脂肪組織では両群に差は見られなかったものの、皮下脂肪組織では減少傾向がみられ、精巣上体周囲脂肪組織では有意な減少がみられた。同様の実験を暗期ZT18の投与で行ったところ、上記の薬理効果は認められなかった。以上のことから、YNT-185の末梢投与は少なくとも摂食量の抑制を介して、末梢における脂肪蓄積を減少させることで、高脂肪による体重増加を抑制することが示唆された。また、こうした薬理作用には時間依存性があることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
1)YNT185の時間依存的投与後の血液・脳内への移行の検討 YNT185 (40mg/kg)を野生型マウスにZT6あるいはZT18に投与後、採血、脳を採取しHPLCにてYNT185の量を測定し、時間依存的な取り込みの違いを調べる。 2)摂食量、行動量、基礎代謝量に及ぼすYNT-185効果の時系列的検討 YNT-185の効果が認められた投与時間のプロトコールで、摂餌量、水平運動、輪回し運動量、呼気代謝測定装置(ARCO-2000)を用いた基礎代謝量について時系列で観察し、摂餌時間、自発運動パターンに対するYNT-185の効果を調べる。 3)オレキシン2型受容体作動薬:YNT-185の脳内標的部位の同定 YNT-185の抗肥満効果を示す標的部位を明らかにすることを目的とし、脳内の候補領域を探索・同定する。具体的には、高脂肪食負荷マウスの体重減少に最も有効なYNT-185の投与時間で、YNT-185投与群と対照溶媒投与群の脳で、神経活動のマーカーであるFos蛋白質の発現を比較するためFosの全脳マッピングを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度は研究分担者の入鹿山チームが、本研究費を使用せずに予備的に研究を実施した。2018年度分の研究費は、科研費の基金化のメリットを生かし、2019年度に繰り越して合算して使用し研究を加速する予定である。またその使途は人件費・謝金を想定している。
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