研究課題
オレキシン2型受容体作動薬・YNT-185の末梢投与により、高脂肪食負荷マウスの代謝異常を抑制することを発見した(体重、血漿・肝臓中の中性脂肪増加の抑制)。オレキシンシグナルは日内変動を示し、生体リズムの発現・制御に関わっていることからリズムに則した脳内オレキシンシグナルの活性化は代謝リズムを整える可能性が考えられた。高脂肪食負荷による代謝リズム異常を示すマウスにZT6(明期)にYNT185を投与すると体重増加の抑制作用が認められ、それに伴い摂食量の減少が観察された。皮下脂肪組織では減少傾向がみられ、精巣上体周囲脂肪組織では有意な減少が認められた。同様の実験を暗期ZT18の投与で行ったところ上記の薬理効果は認められなかった。したがって、YNT-185の薬理作用には時間依存性が示唆された。それぞれの時間でYNT-185を腹腔内投与し、血漿内、脳内のYNT-185レベルを測定した結果、薬理効果と相関した増加傾向が見られたことから、YNT-185の薬理効果の時間依存性は血管内、脳内への吸収が関与していることが示唆された。YNT-185の末梢投与は、少なくとも摂食量の抑制を介して、末梢における脂肪蓄積を減少させることで高脂肪負荷による体重増加を抑制すること、ならびにこの薬理作用には投与時間依存性があることがわかった。メタボリックシンドローム、いわゆる肥満は多くの場合、合併症により健康寿命を短くし、QOLの低下を招くだけでなく、医療費を圧迫するなど大きな社会問題となっている。一方、代謝改善薬としてオレキシン系を標的にしたものは現在のところ存在しない。今回の結果から、オレキシン2型受容体作動薬は将来的に全く新しい機序の代謝改善薬として有望である。また、既存の治療法とは作用部位が異なるため、既知の治療法との併用により相加・相乗効果が期待できる。
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