ラット顎下腺・舌下腺支配の副交感神経の一次中枢である上唾液核(SSN)ニューロンの興奮性に対するドパミン(DA)、セロトニン(5HT)、ノルアドレナリン(NA)の影響をスライスパッチクランプ法により検討した。保持電位-70mV、テトロドトキシン存在下で内向き電流および微小興奮性シナプス後電流(mEPSC)に対する影響を調べた。内向き電流発生について、1個のニューロンで1)DAと5HTに応答するがNAにはほとんど応答しない、2)5HTに応答するがDAおよびNAにはほとんど応答しない、3)どの伝達物質にも応答しないタイプが存在した。またDAは外向き電流を発生するニューロンもあった。mEPSCについて、DAはその発生頻度にほとんど影響しなかったが、5HTやNAは促進するものがあった。内向き電流の結果から、多くのSSNニューロンのシナプス後膜には、興奮に寄与するDAおよび5HT受容体が存在する一方、NA受容体は少ないことが示唆される。DAに対する外向き電流発生から、シナプス後膜に抑制性に寄与するDA受容体の発現が示唆されるが、これは免疫組織化学的実験で抑制性に関与するDAのD4受容体が発現していた結果を支持するものである。mEPSC発生頻度の結果から、SSNニューロンのシナプス前膜には、興奮性の5HTおよびNA受容体が発現することが示唆される。これは抗精神病薬の5HT・NA再取り込み阻害薬(SNRI)の副作用で流涎が問題となっているが、これは、このタイプの薬剤によりSSNニューロンの5HTおよびNA受容体が刺激されたことが原因かもしれない。これらの神経伝達物質のSSNニューロンの興奮性に対する影響を結論する為に、抑制性シナプス伝達に対する影響も含めて引き続き検討を行っている。
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