研究課題
高血圧症に対するアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)の一つである降圧剤テルミサルタンは、食道腺癌に対する抗腫瘍効果が我々の実験系で実証され、化学予防薬としての可能性を秘めている。本研究の目的は、テルミサルタンの大腸癌に対する抗腫瘍効果に関してそのメカニズムに関連する分子(アポトーシス関連分子、血管新生分子、チロシンキナーゼ分子、microRNA)を網羅的に解析し、その抗腫瘍作用の機構を明らかにし、化学予防薬としての可能性を探求することにある。大腸癌細胞株(CACO2,COLO320)に対し各濃度のテルミサルタンを投与後、経時的にcell counting kitを用いて、MTTassayを行い、腫瘍抑制効果の可能性が検出されていた。各濃度のテルミサルタン投与後、フローサイトメトリーを用いて時間経過24,48時間後の細胞の細胞周期パターンを検討し、各細胞周期に機能する細胞周期関連分子の発現量をWestern blotにより解析した。しかし、テルミサルタンの細胞周期における増殖抑制が実験を繰り返しても確認できなかった。そこで、大腸腫瘍の1つである消化管間質性腫瘍(GIST)にターゲットを変更し同様の手順で研究を遂行した。GIST-T1細胞株に対して細胞増殖アッセイを行い、テルミサルタンの抗腫瘍効果を確認後、Cyclin D1の発現低下を介したG0-G1細胞周期タンパクを抑制することを発見した。その作用機序としてAMPKαリン酸化を促進するが、下流域のmTOR/p70S6K のリン酸化は抑制しないことも確認された。さらに、テルミサルタン投与したGIST-T1細胞はmiR1307-3pの発現低下がみられ特異的microRNAを介した抗腫瘍効果も確認された。テルミサルタンは細胞周期の抑制を誘導することにより、GIST細胞の増殖を抑制すると結論づけた。
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Molecular Medicine Reports
巻: 22 ページ: 1063~1071
10.3892/mmr.2020.11144