研究課題
食生活の欧米化による肥満者の増加が進む一方で、ダイエットも流行している。近年のダイエットブームの中、炭水化物制限食による『低インスリンダイエット』が流行している。この『低インスリンダイエット』はRobert Atkins博士が提唱したもので、血糖値の上がりにくい食品を食べ、インスリンの過剰な分泌を抑えることでダイエットが可能というものである。この方法で減量に成功した人も多いが、その危険性も報告されている。本研究では、『低インスリンダイエット』が男性性機能へ及ぼす影響を解明し、心血管機能への影響および回復可能性を男性ホルモンに着目して解明する。本研究では、下記の①『低インスリンダイエット』による性機能への影響、②『低インスリンダイエット』による心血管機能への影響、③通常食に戻したときの回復可能性の検討の3つの項目に着目して研究を遂行する。本研究では実験モデルとして、性成熟が完了した12週齢の雄性Wistar STラットを用い、『低インスリンダイエット』として炭水化物制限食(lowcarbohydrate diet; LCD)を飼料として与えるLCD群と通常食を与える通常食群の2群を作成した。 等尺性張力測定により経壁電気刺激による弛緩反応を測定したところ、LCD群で有意な反応の低下が観察された。また、リアルタイムPCR法を用いて、陰茎海綿体における神経型一酸化窒素合成酵素(nNOS)の発現変動を検討したところ、LCD群で有意な低下が観察された。また、LCD群においてS1P1のmRNA発現量が減少していたことより、極端な炭水化物制限によりS1P1が減少しAktの活性化が抑制され、神経細胞を傷害した可能性が示唆された。これらの結果より、『低インスリンダイエット』により、神経系を介した勃起障害の発症が示唆される。