研究課題/領域番号 |
18K11027
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
由田 克士 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 教授 (60299245)
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研究分担者 |
福村 智恵 (荻布智恵) 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 准教授 (80336792)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 低出生体重児 / 生活習慣 / 食習慣 / 推奨体重増加量 / 母子保健 / 公衆栄養施策 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、これまでに調査実施済みのデータを検討するとともに、今後、出生時からの関連成績とリンクして分析する幼児に対する栄養調査を実施した。 低出生体重児は、妊娠37週未満の早産に多く認められる。このため、特別な理由がなければ、37週以降の正期産での出産が望まれる。一方、母親の体格や妊娠期間中の体重増加量、生活習慣等も児の出生体重への関連が指摘されている。そこで、在胎週数と出生体重の関係において、母親の身体状況、生活習慣、食習慣等の影響を検討した。大阪市S区で3か月児健診を受診した児の母親を対象に実施した調査データを用いた。単胎児を在胎期間25週以上42週未満、出生体重1,500g以上4,000g未満で出生、回答に欠損値等を認めない543人を解析対象とした。在胎週数や出生体重は、喫煙習慣に強く影響を受けるが、妊娠前の朝食摂取習慣や減量経験にも影響を受けることが示唆された。 一方、低出生体重児の出生要因として、母体の妊娠期間中の体重増加が少ないことも知られている。厚生労働省では妊娠前の体格区分毎による推奨体重増加量を示しているが、適切に受け入れられているかは不明である。そこで、妊娠初期における推奨体重増加量の知識の有無と栄養素等の摂取状況を検討した。M県のある医療機関に受診した妊娠16週未満の妊婦を対象に、食生活に関する質問紙調査、栄養調査を実施した。質問紙調査で推奨体重増加量の知識を問い、体格区分毎に設定された適正範囲内の回答が得られるか確認した。この結果、推奨体重増加量の知識がある妊婦は知識がない妊婦よりも、エネルギー摂取量は低値であった。エネルギー摂取に対する過剰な意識が、不適切な摂取につながった可能性が示唆された。 また、近畿地方のある市で、幼児を対象に季節や曜日を考慮した栄養調査を実施した。現在、出生時やその後のデータとリンケージを行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画どおり、自治体ベースの調査は継続もしくは終了できている。 また、妊婦を対象とした栄養調査成績と推奨体重増加量の関連については、論文を投稿中であり、更に追加の検討を行っている。 一方、幼児を対象とした季節や曜日を考慮した栄養調査については、単年度分の調査は終了しており、現在集計中である。
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今後の研究の推進方策 |
自治体ベースで実施している幼児の母親を対象とした質問紙調査を継続するとともに、調査が終了した部分よりデータベースの作成とデータクリーニングを行う。そして、低出生体重児の出生と母親の食習慣、生活習慣、生活環境の関連について、地域ごとでの横断解析や地域間での違いについて検討を行う。さらに、データが確定したところから、妊娠前、妊娠中、出生時、3か月児健診時、1歳6か月児健診時、3歳児健診時のデータをリンケージし、縦断的な解析も実施する。これによって、妊娠前から3歳児健診までの期間における、母親の食習慣、生活習慣、生活環境と児の出生時体重やその後の発達状況を経時的に検討する。 また、幼児を対象に季節や曜日を考慮した食事調査については、出生時からの健診成績等とのデータリンケージを実施し、栄養状態と児の発達の関係について検討を進める。更に他自治体においても同等の調査を新規に実施する予定である。 一方、M県のある医療機関実施した妊娠16週未満の妊婦を対象として実施した調査については、得られた成績を更に詳細に解析するとともに、先行研究で得られている結果と併せて考察を行う。 これら一連の取り組みから得られるデータを取りまとめながら、引き続き、低出生体重児の減少と母子保健を推進する効果的な公衆栄養施策を実現するための科学的根拠の蓄積に取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予想よりも物品費やその他の費目に関する支出額が抑えられたことにより、残金が発生した。 これらの残金については、次年度における論文の投稿に関わる費用や物品費に充当する予定である。
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