研究課題
Lipin1の骨格筋筋量調節への影響グルココルチコイド受容体を介して、骨格筋特異的萎縮関連遺伝子Atrogin1, Murf1は、栄養センサーであるmTORC1とのクロストークがあることが確認されているが(Shimizu N et al, Cell 2011)、mTORC1の活性化によって調節されるLipin1活性の筋量調節への関与についてはほとんど報告されていない。また、Lipin1はフォスファチジン酸を脱リン酸化する脂質代謝酵素としての機能と、核内移行して転写共役因子としての機能を持つが、これらの骨格筋筋量調節に与える影響についても未だ不明である。そこで今回我々は、C2C12マウス筋管細胞に対してアデノウィルスを用いて野生型Lipin1、フォスファチジン酸脱リン酸化酵素活性を持たない変異型Lipin1, 核内移行をしない変異型Lipin1それぞれを過剰発現させ、Dexamethasone(10nM、16時間)を添加し、骨格筋特異的萎縮関連遺伝子Atrogin1、Murf1遺伝子発現量の変化を確認した。その結果、Dexamethasone添加によって、各群でAtrogin1, Murf1遺伝子発現量が増加したが、野生型Lipin1と、フォスファチジン酸脱リン酸化酵素活性を持たない変異型Lipin1を過剰発現させた群に対して、核内移行をしない変異型Lipin1を過剰発現させた群は、Atrogin1, Murf1遺伝子発現量増加が有意に抑制されていた。これらの結果より、Lipin1の核内移行が骨格筋筋量調節に関与している可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
おおむね順調に研究を行えているが、予想外の問題が起きた場合は、代謝内分泌学講座内で定期的にラボミーティングを重ねているため、トラブルシューティングはより確実に行うことが可能であり、予想外の結果が出た場合の対応も柔軟に行うことができる。
今後は30年度の結果を踏まえて、Lipin1の骨格筋筋量調節の詳細をC2C12を使用したin vitroと、Lipin1ノックアウトマウスを使用したin vivoにて明らかにする。また、Lipin1の過剰発現が骨格筋にオートクライン、パラクラインに作用する筋量増加抑制因子であるMyostatinの発現量を増加させることも確認しているため、in vivoにおいて、Lipin1ノックアウトマウスを使って、骨格筋量、褐色脂肪量の調節を通した全身の代謝量調節にLipin1が果たす役割を明らかにする。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件)
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