研究実績の概要 |
クエン酸は「疲労感を軽減する」機能性表示食品として市場に出回っている。しかし、これらの効果は主観的評価やグリコーゲンや乳酸などの一部の物質の変化によってのみ報告されており、客観的な評価法は確立されていない。また、クエン酸には疲労軽減効果はないとする報告もみられる。初年度は、慈恵会医科大学が既に発表しているモデルを基にして、当研究室でも「抗疲労評価モデル」と「疲労回復評価モデル」を確立することを目標とした。「抗疲労評価モデル」では、マウスを1時間遊泳させる(この間、マウスの遊泳距離をビデオトラッキングシステムにより測定する)ことにより、肝臓のGADD34, ATF-3, IL-1βのmRNAの発現量が有意に上昇することを明らかにした。すなわち、「抗疲労評価モデル」を確立することができた。一方、「疲労回復評価モデル」では、遊泳により疲労困憊したマウスでは肝臓のGADD34, ATF-3, IL-1βのmRNAの発現量が有意に上昇するが、遊泳1時間後ではこれらの上昇は全て疲労のない状態と同程度まで回復し、この評価系においては、1時間で疲労がほぼ完全に回復することが示された。この結果からは疲労回復の過程を捉えることが出来なかったため、引き続き「疲労回復評価モデル」の条件を検討する必要がある。本年度は、確立した「抗疲労評価モデル」を用いて、クエン酸の摂取がマウスの遊泳距離を延長するのか、また、クエン酸の摂取は、肝臓のGADD34, ATF-3, IL-1βのmRNAの発現量にどのような影響を与えるのかも検証した。結果、クエン酸を摂取したマウスでは遊泳距離が有意に延長し、クエン酸が疲労を軽減している可能性が示された。一方で、GADD34, ATF-3, IL-1βのmRNAの発現量には変化がみられず、クエン酸の疲労軽減効果にはこれらとは別のメカニズムが関与している可能性が示された。
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