研究実績の概要 |
クエン酸は「疲労感を軽減する」機能性表示食品として市場に出回っている。しかし、これらの効果はアンケートなどの主観的評価や臓器のグリコーゲン含量や血中の乳酸などの一部の物質の変化によってのみ報告されており、客観的な評価法は確立されていない。また、クエン酸には疲労軽減効果はないとする報告もみられる。そこで本研究では、クエン酸には本当に疲労軽減効果があるのかを客観的に評価すると共に、その分子メカニズムの検証を試みた。 具体的には、マウスを1時間遊泳させ疲労を負荷し、その時の疲労の度合いを評価するモデル(疲労感軽減効果評価モデル)と、マウスを強制遊泳により疲労困憊させ、その後の疲労の度合いを経時的に評価するモデル(疲労回復効果評価モデル)の2つのモデルを確立した後、これらのモデルを用いてクエン酸の効果を検証した。 疲労感軽減効果評価モデルにおいては、クエン酸の摂取はマウスの遊泳時間を有意に延長させ、運動前のクエン酸の摂取が疲労感を軽減している可能性が示されたものの、肝臓および骨格筋における疲労因子としてのATF3, 疲労感誘発因子としてのIL-1β, 疲労回復因子としてのGADD34のmRNA発現量には影響が見れらなかった。また、疲労回復効果評価モデルにおいては、クエン酸を摂取してもその後の自発運動量および疲労の分子メカニズムに関する因子に影響はなく、運動後のクエン酸の摂取が疲労からの回復を早める確証を得ることはできなかった。
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