コロナ渦の中、高齢化社会を迎える先進国では寿命の延長や老化制御研究への関心が高まっている。肥満や糖尿病を含む生活習慣病が進行すると、インスリン抵抗性が高まり、個体レベルの老化を加速することが知られている。我々は先行研究で、脂肪組織特異的にCREG1の発現が誘導されるaP2-CREG1-Tgマウスを利用し、CREG1が脂肪燃焼を介して抗肥満に寄与する褐色脂肪の分化誘導を促進し、様々な生活習慣病態を改善することを明らかとした。加えて、CREG1が細胞分裂や細胞老化と関連があるという報告もなされていることから、aP2-CREG1-Tgマウスは個体老化や寿命制御におけるCREG1の役割を解明するための良い動物モデルであると考えられた。本申請研究では、aP2-CREG1-Tgマウスを用いて生体CREG1レベルと老化・寿命との関連性を明らかにすることを目的とした。前年度に引き続き、高脂肪食投与による食餌誘導性肥満のaP2-CREG1-Tgマウスを用いて寿命について検討した。これらの寿命解析は、23℃の飼育環境下、12ヶ月齢まで標準食投与を行い、その後、60%高脂肪食投与を行った。興味深いことに、野生型マウス群と比較して、Tgマウス群では平均寿命が延長される結果を得た。また、25ヵ月齢の雌マウスを用いて、CREG1発現量が腎臓の老化に与える影響について検討を行った。HE染色やPAS染色法を用いた組織・病理学的な解析では、Tgマウス群で加齢性腎硬化が改善されている結果を得た。加えて、血中のクレアチニンやシスタチンCの濃度測定実験より、Tgマウス群において腎臓のろ過機能の低下が抑制されていることを明らかにした。さらに、Tgマウスの腎臓には老化細胞の蓄積が減少しており、p38MAPK及び細胞老化特異的な分泌表現型に依存した炎症の進行が緩和されていることを明らかにした。
|