研究課題/領域番号 |
18K11036
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研究機関 | 広島国際大学 |
研究代表者 |
堀 隆光 広島国際大学, 薬学部, 教授 (00199522)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | AGEs / 血管内皮細胞 / グリセルアルデヒド / 血管透過性 / RasGRP2 |
研究実績の概要 |
生活習慣病の1つである糖尿病は、発症しても自覚症状がほとんどないため、合併症の重症化によって死に至る危険性も大きい。糖尿病の合併症に共通する重大なイベントとして血管障害があり、その起因物質の1つに終末糖化産物(advanced glycation end products; AGEs)が挙げられる。AGEsによる血管障害は、血管内皮細胞死や炎症反応、血栓形成、粥腫内での血管新生など様々な過程を経て引き起こされるため、関与する細胞は血管内皮細胞、マクロファージ、壁細胞、血小板など多岐にわたる。血管内皮細胞の研究については、様々な面から解析が行われ、酸化ストレスの惹起から始まる障害のメカニズムが解明されつつある。一方で、その治療薬やAGEsの形成阻害剤などは未だ開発されておらず根本的な解決に至っていない。本研究においては、重症化予防の観点からAGEsによる血管障害において、血管内皮細胞におけるras guanyl nucleotide releasing protein 2(RasGRP2)の防御因子としての機能を追求することを目的としている。 不死化ヒト臍帯静脈内皮細胞(TERT HUVEC)を用いて、RasGRP2安定過剰発現株を樹立した。また、樹立したTERT HUVECのRasGRP2安定過剰発現株およびそのMock株にグリセルアルデヒド由来のtoxicなAGEs(TAGE)を添加したところ、RasGRP2安定過剰発現株でTAGEによる血管透過性の亢進が有意に抑えられ、RasGRP2はTAGEが引き起こすROS経路および非ROS経路を抑えることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度では、RasGRP2によるTAGE誘発血管透過性亢進の抑制メカニズムについて解析した。ほとんどの研究は順調に行われたが、コロナ禍の影響で一部試薬の納期が遅れたため、翌年度に行うこととした。
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今後の研究の推進方策 |
TAGEが引き起こす血管透過性亢進のメカニズムやRasGRP2によるその抑制メカニズムは、ほぼ明らかとなってきた。しかしながら、血管透過性に関わるタンパク質などの変化について、今後も詳細な解析を行う予定である。具体的には、βカテニンなどを中心に検討する。また、新たに樹立した不死化微小血管内皮細胞のRasGRP2安定過剰発現株に対しても同様の解析を行い、TAGEが引き起こす影響や防御因子としてのRasGRP2の影響を検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で一部試薬の納期が遅れたため。 試薬の納期が遅れたことによってできなかった実験を行う。
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