研究実績の概要 |
【研究の目的及び意義】慢性腎臓病食事療法における「たんぱく質摂取制限食」の有効性に関しては,未だに賛否両論の議論が続いている。また,糖尿病網膜症に限定した食事療法に関しては,未だに検討されていない。本研究では, 初診2型糖尿病外来患者の合併症に関連する栄養状態を含む危険因子の検討を目的とした。 【研究対象・方法】初診2型糖尿病初診外来患者( ①糖尿病未治療, ②尿蛋白±以上または推定糸球体濾過量60mL/分/1.73m2未満)54名を対象者として, 血液検査・尿検査・食事摂取頻度調査を実施し, 眼科検査結果情報の提供を受けた。アルブミン尿の有無と網膜症有無を評価し, 二元配置分散分析, フィッシャー正確確率検定, ロジスティック回帰分析を実施した。 【結果】アルブミン尿(Alb)無・網膜症(Ret)無群(基準群:24名)、Alb無・Ret有群(4名)、Alb有・Ret無群(21名)、Alb有・Ret有群(5名)であった。交互作用が有意であり、基準群と統計的に差を認めた栄養関連因子はなかった。主効果では、Alb有無において拡張期血圧・BIL・TC・尿糖・尿中尿素窒素・尿Na・推定食塩摂取量で有意な差が認められた。Ret有無においてTP・BUN・脂質・一価不飽和脂肪酸・ヨウ素摂取量で有意な差を認めた。Ret有群は、エネルギー摂取量が低い傾向であったが, BUNとヨウ素については、いずれも高値であった。Ret有群はRet無群よりもBUNが有意に高く, TPが有意に低く, 異化状態に関連していることが示唆された。アルブミン尿のロジスティック解析により、推定食塩摂取量が年齢、性別、BMIの独立した説明因子であることが示唆された。 【考察】新たに2型糖尿病と診断された患者の糖尿病合併症に関連する栄養状態を含む危険因子を検討することは、糖尿病合併症発症予防に有用な知見と思われた。
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