研究実績の概要 |
昨年度から引き続き、本年度は「課題1:植物PP摂取の効果への腸内細菌の関与とその機序の検討」を実施した。 抗生物質を与えて腸内細菌を減少させたマウスに、高脂肪食および小豆ポリフェノール(APP)を与え、脂質・糖代謝に及ぼす影響を検討した。すなわち、5週齢雄性ICRマウスを6群に分け、CN, CN-Pに対照(C)食と水道(N)水を、FN, FN-Pに高脂肪(F)食とN水を、FA, FA-PにF食と抗生物質含有(A)水を4週間自由摂取させた。A水は1週間前から与えた。CN-P, FN-P, FA-Pに、小豆粒から抽出・粗精製したAPP(40 mg/kgBW)を試験期間中毎日強制経口投与した。試験終了後、血液生化学検査、組織の重量測定および盲腸内容物の腸内細菌叢と短鎖脂肪酸(SCFA)解析を行った。 その結果、抗生物質を投与した2群は、盲腸肥大と内容物の液状化、腸内細菌叢の種多様性の低下およびSCFAの減少が確認された。FNは、CNと比べてFirmicutes/Bacteroides比が上昇する傾向が見られた。APP投与したCN-P, FN-Pでは、CN, FNと比べて種多様性が増加しSCFA濃度が有意に上昇した。体重および脂肪組織重量は、高脂肪食の摂取によりCNと比べてFNで有意に増加したがFN-Pで減少した一方で、FA-PはFAより高値の傾向であった。血漿中TGおよびHOMA-IRは、FNと比較してFN-Pで有意に低下したが、FAとFA-P間で有意差は無かった。以上のことから、APPには、腸内細菌叢の多様性を高め、高脂肪食摂取に起因する脂質や糖代謝の異常を軽減する作用が認められた。この作用機序として、腸管から吸収されたAPPに加えて、腸管内の未吸収APPによる腸内細菌叢の多様性の増大が関与する可能性が考えられた。
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