メタボリックシンドロームの予防・改善には、日常的に中等度強度を超える有酸素運動実施が有効である。ただし、平地歩行では強度的に不十分な場合が多く、血清脂質や血糖値の改善に至らない場合が多い。いっぽう階段の上りでは抗重力運動となるため10メッツ近く、下りは3メッツ程度となるため、階段昇降運動を連続的に行った場合には平均6-7メッツ程度の運動となる。本研究の目的は、階段昇降運動による介入研究を行い、その健康増進効果を検証することである。 本研究では、60-70歳代の中高齢者を対象に75日間の階段昇降運動(15~25段の階段、週4日以上、1日4分以上)の運動介入を行い、血清脂質値および耐糖能の維持・改善につながるか、および行動体力に関わる指標の維持・改善につながるかを調査した。その結果、中性脂肪値、HDL-コレステロール値、HbA1c値、オステオカルシン値および連続血糖モニターによる1日のAUC値、さらに下肢の敏捷性について機能の改善・向上を示す有意な変化が認められた。 また、高齢者が階段上りなどの高強度運動を行った場合、加齢による呼吸循環器応答の遅れが考えられる。そこで、高齢者および若者に対して60段の階段上り運動を2回連続して行ってもらい、その応答に違いがあるかを検証した。その結果、いずれの階段昇りにおいても最初の30秒間は有意に高齢者の心拍数応答が遅く、いっぽうで、階段を上り終えた50秒後では両被験者間の心拍数増加に違いがないことが明らかになった。両者の体重当たりの酸素消費量には違いは認められなかった。さらに、これらの階段運動はアドレナリン、ノルアドレナリンの増加を伴うが、その増加分は自転車エルゴメータを用いて最大下運動(90%VO2peakレベル)を行った場合に観察される増加分の20~30%程度であることが明らかになった。
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