ビタミンKは、血液凝固や骨形成に重要な役割を担っている。ヒトが主に食事から摂取するビタミンKはPKであるが、組織中に存在するビタミンKの大部分はMK-4である。申請者は、これまでにPKが、小腸で側鎖が切断され中間体MDとなり、組織中でUBIAD1によってMK-4に変換され様々な生理活性を示すことを科学的に証明した。しかし、MDへの側鎖切断機構は明らかでなく、「ビタミンK代謝ダイナミクス」の全容は未だ明らかでない。そこで、本研究ではビタミンKの代謝機構の理解を目指し、以下を実施している。①網羅的解析および新規ビタミンK誘導体による効果的な側鎖切断酵素の探索と同定、②側鎖切断酵素欠損細胞やマウスを用いた生体内ビタミンK代謝機構の解明。本研究の成果より、MK-4への変換機構が解明できれば、ビタミンKが生体内で代謝変換される意義が明らかになることが期待される。 申請者はこれまでに、①の網羅的解析に多くの時間を要した。磁気ビーズを融合した新規ビタミンK誘導体を作成し、標的組織から単離したタンパク質と反応させ、免疫沈降法を行った。その後、2次元電気泳動法により、コントロールと比較を行いMALDI-TOF/TOFを用いて目的タンパク質の探索・同定研究を行った。また、新学術領域「ゲノム支援」からトランスクリプトーム解析の支援を受けた。側鎖切断反応を受けるビタミンKと受けないビタミンK誘導体を投与したマウスから、小腸上皮細胞を単離し次世代シークエンサーを用いたオミクス解析を行った。その結果、複数のたんぱく質を取得し、非常に重要と考えられるタンパク質を見出した。本年度は、目的タンパク質の機能解析を細胞レベルで評価を行った。その結果、側鎖切断反応を担うと考えられる酵素を複数同定し、ビタミンKの変換活性を評価した。低い切断活性ではあるが、その中で1つの酵素が側鎖切断反応を担う可能性が示唆された。
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