研究課題/領域番号 |
18K11058
|
研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
矢野 友啓 東洋大学, 食環境科学部, 教授 (50239828)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 中皮腫幹細胞 / 小胞体ストレス / プロテオソーム / オートファジー / アポトーシス / 薬剤耐性 |
研究実績の概要 |
本年度の研究では、前年度確立した中皮腫細胞株(幹細胞)の培養法を用いて、既存の化学療法剤(ペメトレキシド)に顕著な薬剤耐性を示す中皮腫細胞株に対して、プロテオソーム阻害剤であるブロテゾミブとオートファジー前期の阻害剤であるクロロキンを併用することで、過度の小胞体ストレスが中皮腫細胞に負荷され、顕著な細胞死(ネクロプトーシスではなく、アポトーシスに依存)を誘導し、化学療法剤(ペメトレキシド)と併用することで、より顕著な細胞死を引き起こすことが明らかになった。このことから、プロテオソーム阻害剤とオートファジーの同時阻害により引き起こされる小胞体ストレスは、中皮腫細胞における既存の化学療法剤(ペメトレキシド)に対する顕著な薬剤耐性を克服する有効な方法であることが明らかになった。次に、我々の以前の研究から、優れた抗中皮腫効果を示すことが明らかになっているビタミンE同族体のトコトリエノールの安定化誘導体であるT3Eの主な抗中皮腫効果の標的が、プロテオソームとオートファジーにあるか検討したところ、T3Eが顕著なプロテオソームのタンパク分解活性(キモトリプシン様活性)阻害を介して過剰な小胞体ストレスを引き起こすと同時に、クロロキンと同様な作用、すなわち、オートファジー前期の阻害(オートファゴソームの蓄積)を引き起こすことにより、この2つのタンパク分解系同時阻害による相乗効果により、より強力な細胞死を引き起こすことが明らかとなった。さらに、T3Eを化学療法剤(ペメトレキシド)と併用することで、その薬剤耐性が顕著に克服されることが明らかとなり、その薬剤耐性克服はT3Eのプロテオソームとオートファジーの同時阻害により引き起こされる小胞体ストレスとそれに引き続き起きるアポトーシスが関与していることが判明した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標は中皮腫(幹細胞)の薬剤耐性の一要因である小胞体ストレス-プロテオソーム-オートファジーの細胞内ストレス系を制御することで、中皮腫の持つ薬剤耐性を克服できることを証明し、この細胞内ストレスを制御できる食由来の機能性素材をスクリーニングすることであったが、研究実績概要の欄で示したように、この2つの目標はほぼ達成されたため、ほぼ計画通りの成果が得られたと判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度となる2020年度は、今年度スクリーニングされた食由来の機能性素材の抗中皮腫効果としての小胞体ストレス-プロテオソーム-オートファジーの細胞内ストレス系を制御する詳しいメカニズムをシグナル伝達系レベルで明らかにし、その有効濃度も含めて明らかにし、この機能性素材の抗中皮腫成分としての可能性を示し、将来の臨床応用へつなぐ。
|