研究課題/領域番号 |
18K11061
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
小林 麻貴 神戸学院大学, 栄養学部, 助教 (70550789)
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研究分担者 |
橋本 堂史 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (90362764)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | オルニチン / 脂質代謝 / ヒト肝細胞株HepG2細胞 / アンモニア / マウス肝細胞株Hepa1c1c7細胞 / 尿素回路 / アルギニン / ICRマウス |
研究実績の概要 |
オルニチンの生体調節機能について、以下の項目について研究を実施した。 (1)肝細胞の脂質蓄積に及ぼすオルニチンの効果:これまで明らかにしてきたヒト肝細胞株HepG2細胞におけるオルニチンの脂肪蓄積抑制効果に関する詳細な機序をAMPKシグナルの下流シグナルとしてオートファジーの促進に着目し、オートファジーの阻害剤であるクロロキンを用いて検討したが、脂肪蓄積抑制効果に影響を及ぼすことはなかった。 (2)肝細胞におけるアンモニア誘導性細胞死に及ぼすオルニチンの保護効果:マウス肝細胞株Hepa1c1c7細胞にオルニチンを作用させると、アンモニア誘導性の細胞死を抑制すると共に、培養液中の尿素含量が上昇する。今年度は、このアンモニアを尿素に解毒することで細胞死を抑制していると考え、オルニチン処理時の尿素回路の亢進について検討した。オルニチンを作用させたHepa1c1c7細胞では細胞中のオルニチン濃度が上昇すると共に、オルニチンの前駆物質アルギニン濃度も増加していたことから、尿素回路が亢進していることが明らかになった。また、ヒト肝細胞株HepG2細胞においてもオルニチン処理により同様のイベントが確認できた。つまり、オルニチンの肝細胞保護機能の機序のひとつとして、尿素回路を亢進することで毒性を示すアンモニア解毒していると考えた。 (3)オルニチン経口摂取時における体内動態:ICRマウス(オス、6週齢)に胃ゾンデを用いて375 mg/Lのオルニチン水溶液200 μLを単回で経口投与し、経時的に血中および肝臓中にオルニチン濃度を調べた。血中、肝臓中のいずれにおいても経時的にその濃度は上昇し、血中では45分後、肝臓中では1時間後に最大濃度に達した。一方、自由摂取ではオルニチンの蓄積は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究代表者が産前産後休暇取得し、研究を遂行できない期間が生じたため。
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今後の研究の推進方策 |
オルニチンの生体調節機能について、以下の項目について研究を実施する。 (1)オルニチンの肝細胞への脂質蓄積に及ぼす効果:ヒト肝細胞株HepG2細胞におけるオルニチンの脂肪蓄積抑制効果に関する機序として、AMPKシグナルの下流シグナルの「脂肪酸合成の抑制」および「脂肪酸β酸化の促進」について詳細を調べる。また、マウスを用いたフルクトース誘導性脂肪肝に対するオルニチンの効果を検討する。 (2)肝細胞におけるアンモニア誘導性細胞死に及ぼすオルニチンの保護効果:これまでの研究において、オルニチンによるアンモニア誘導性細胞死の抑制効果の機序のひとつとしてアンモニアの解毒代謝を促進していると結論付けた。しかし、オルニチンがアンモニアによって誘導される細胞死シグナルを抑制している可能性も残っている。そのため、アンモニア誘導性の細胞死について調べ、そのシグナル伝達に及ぼす影響について調べる。 (3)オルニチンの肝細胞障害抑制効果:オルニチンのアンモニア誘導性細胞死の抑制効果や、オルニチン単回投与時におけるマウス血中および肝臓中の濃度変化について明らかにしてきた。そこで、オルニチン経口投与による個体レベルにおけるオルニチンの肝障害抑制効果について明らかにする。実験モデルとしては、チオアセトアミド誘導性肝炎マウスモデルを用いて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が産前産後休暇取得をしたため、研究を遂行できない期間が生じ、次年度使用額が生じた。そのため、補助事業期間延長を申請し、次年度に使用する。
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