本研究では抗酸化物質の一種であるポリフェノール類による抗血栓効果、特に血小板活性化を引き起こすCa2+流入機構への直接的な抑制効果を検討した。 我々は現在までに血小板の主要なCa2+流入経路であるTRP (transient receptor potential) チャネルを介するアルコールの抗血栓作用について検討を行っており、エタノールがTRPチャネルに特異的に作用し、血小板の活性化を抑制する事を報告した。これらの知見を踏まえて、今回我々はポリフェノールによるTRPチャネルを介する血小板容量性Ca2+ 流入 (CCE) 及びジアセルグリセロール (DG) 依存性Ca2+流入に対する効果を血小板凝集、細胞内Ca2+流入等にて検討することとした。蛍光色素Fura-2/AMを用いて血小板細胞内Ca2+ 濃度の変化を測定し、レスベラトロールの血小板活性化に対する効果を検討した。前年度にレスベラトロールは12.5-50μMの範囲で濃度依存的にThrombin刺激による血小板活性化及びCa2+流入を抑制したことを確認していたため、それより生理的なさらに薄い濃度でのレスベラトロールの効果を検討した。Thrombin及びCCEを惹起する目的でThapsigarginを用いて血小板凝集及びCa2+流入をを検討したところ、終濃度6.25μMのレスベラトロール投与においても血小板への抑制効果が確認された。しかしながらOAGによるDG依存性Ca2+流入については抑制効果を認めなかった。この事よりレスベラトロールは血小板活性化を抑制し、抗血栓効果を示す可能性が示唆され、その抑制効果はCCEを介する事が考えられた。
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