研究課題/領域番号 |
18K11063
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
川上 隆茂 徳島文理大学, 薬学部, 講師 (40441589)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | メタボローム解析 / 妊娠マウス / 小胞体ストレス / 脂肪肝 |
研究実績の概要 |
2018年度では、妊娠マウスを用いた食餌誘発性脂肪肝および線維化発症メカニズムについて1)メタボローム解析、2)小胞体(ER)ストレスの関与、3)妊娠中断による影響について検討した。 1)メタボローム解析:CE-TOFMSおよびLC-TOFMSを用いてマウス血漿の代謝産物を解析し、変動を捉えることを目的とした。非妊娠マウス-脂肪肝誘発食餌群、妊娠マウス-通常食群、および妊娠マウス-脂肪肝誘発食餌群の血漿3検体について測定したところ、イオン代謝物質では、203(カチオン113、アニオン90)のピークが検出された。また脂溶性代謝物質では、141(ポジティブ66、ネガティブ75)のピークが検出され、候補化合物が付与された。 2)小胞体(ER)ストレスの関与:脂肪肝への効果を検討するために脂肪肝誘発食餌の摂食期間に1日2回、化学シャペロンである4-フェニル酪酸(4-PBA)を経口投与した。脂肪肝誘発食餌を摂食した妊娠マウスは非妊娠マウスと比較して、肝細胞中に大型の脂肪滴の著しい増加を認めたが、4-PBAの経口投与によりその脂肪滴は縮小傾向を示した。また、肝臓中のERストレスマーカーであるCHOPおよびGADD34 mRNAの発現量は、妊娠マウスで増大し、4-PBA投与でわずかに低下した。したがって、妊娠期における脂肪肝感受性の亢進にERストレスが関与する可能性が示唆された。 3)妊娠中断による影響:妊娠マウスの脂肪肝誘発食餌群で認められた肝臓重量増加、肝細胞における脂肪滴の増加、肝線維化は、妊娠中断により有意に解消された。以上、妊娠状態の生体内には食餌誘発性の脂肪肝および線維化を促進する因子の存在が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究目的である1)メタボローム解析、2)小胞体(ER)ストレスの関与、3)妊娠中断による影響について解析を行った。妊娠時における脂肪肝発症および進展にはERストレスが関与することを見出し、また、妊娠中断による解析から妊娠期特有の因子が食餌誘発性の脂肪肝および線維化を促進することが明らかとなった。以上の結果から、当初の目的を達成しており、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究結果を踏まえ、メタボローム解析から得られた結果について精査する。脂肪肝発症および進展に関与すると考えられる化合物を肝細胞に曝露し、評価を行う予定である。また、臨床試験の導入に向けた新規化合物の検討として、「ビザンチン」の脂肪肝に対する影響を検討する。具体的には、妊娠マウスモデルおよび食餌誘発性脂肪肝モデルとして既に報告しているメタロチオネイン欠損マウスを用いた解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 次年度使用額が生じた理由として、当初計画時よりも物品を安価に購入できたためである。 (使用計画) 本年度は、臨床試験の導入に向けた新規化合物の検討として、「ビザンチン」の脂肪肝に対する影響を中心に検討する。本年度は、培養細胞関連試薬代に15万円、肝障害マーカーなどの測定に10万円、脂肪蓄積に関与する遺伝子発現量解析に20万円、動物飼育関連に20万円、メタボローム解析用のPCに20万円、学会発表に10万円を計上する。
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