研究課題
本研究では市販のサケ鼻軟骨由来プロテオグリカン標品からプロテオグリカン画分を精製し,これをマウスに経口投与した後,小腸におけるプロテオグリカンの構造変化について検討した。その結果,小腸におけるプロテオグリカンはタンパク質部分がほぼ完全に消化されたが,プロテオグリカンの糖鎖長や硫酸基には変化が認められなかった。このことは,経口投与されたプロテオグリカンの糖鎖部分であるコンドロイチン硫酸は腸管から吸収される可能性が極めて低いことを推測させた。そこで,コンドロイチン硫酸の腸管上皮細胞への直接作用について検討するため,ヒト結腸癌細胞株 Caco-2のアルカリホスファターゼ発現を指標とした培養小腸モデルと大腸モデルを確立した。小腸内容物から得られるプロテオグリカン消化産物であるコンドロイチン硫酸の必要量を調製することは困難であったため,その構造がほぼ解析されている市販コンドロイチン4硫酸(クジラ軟骨由来)および6硫酸(サメ軟骨由来)を用いてこれらモデルへの影響を検討した。まず,ヒアルロン酸において報告されている抗菌ペプチドβ-ディフェンシンの遺伝子発現の亢進について検討したところ,小腸および大腸モデルのいずれにおいてもコンドロイチン硫酸の影響は認められなかった。次に,TNF-αにより誘導される炎症性サイトカインの遺伝子発現について検討したところ,小腸モデルにおいてIL8の遺伝子発現へのコンドロイチン硫酸の影響は認められなかったものの,IL6の遺伝子発現についてはコンドロイチン4硫酸および6硫酸いずれの場合でも有意な発現抑制が示された。また大腸モデルにおいても,有意差は認められなかったもののコンドロイチン硫酸によるIL6の発現抑制傾向が認められた。したがって本研究の結果は,プロテオグリカンの経口摂取が腸管における抗炎症作用および腸管における炎症性疾患の予防に有用である可能性を示唆した。
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