ヒストンH3の9番目のジメチル化リジン(H3K9me2)は転写の抑制マークとして知られており、H3K9me2が脱メチル化酵素により脱メチル化されることでその座位の 遺伝子の発現が活性化される。H3K9me2の脱メチル化酵素JMJD1Aは熱産生、性決定、肥満など様々な生理機能を担う。骨格筋の肥大および、ファイバータイプ 制 御におけるJMJD1Aとエピゲノム変化との関係を解明する為に、Jmjd1a欠損マウスの解析を行った。Jmjd1a欠損マウスは腓腹筋、および、前脛骨筋の重量が低下 し、筋萎縮が起こること、および、トレッドミル検査による持久運動機能も低下することを見出した。そこで、骨格筋の組織学的解析を行ったところ、筋線維の 横断面積も低下することが明らかとなった。さらに、骨格筋のRNA-seqによるトランスクリプトーム解析を行い、原因となる遺伝子群の同定を試みたところ、 Fbxo32などのタンパク質分解に関わる遺伝子の発現が上昇することが明らかとなったため、タンパク質分解の亢進が筋萎縮の原因であることが示唆された。JMJD1Aは脂肪細胞で交感神経の刺激によりリン酸化修飾を受け活性化されることが既にわかっており、交感神経は骨格筋では筋肥大に作用するため、骨格筋における交感神経作用がJMJD1Aを介しているか解析を行った。JMJD1Aのリン酸化修飾を受けるアミノ酸に変異を入れたJMJD1A-SA遺伝子改変マウスにアドレナリン受容体のアゴニストを投与したところ、野生型マウスに比べてアドレナリン の作用が減弱していることが証明できた。
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