研究課題
サルコペニアは骨格筋の減少状態と定義され、Friedらが提唱したフレイルティサイクル(虚弱サイクル)の重要な要素として知られている。サルコペニアの進行は活動量、消費エネルギーの低下へと次々に連鎖し、フレイルを更に進行させる。上部消化管悪性腫瘍、すなわち食道癌や胃癌に対する治療は、内視鏡治療が可能な早期癌を除けば、リンパ節郭清を伴う外科的切除が標準治療であり、悪性腫瘍手術の中で最も多い術式の一つである。しかし、切除に伴う上部消化管の喪失は、術後の経口摂取量の低下が必発であり、患者は体重減少のみならずADL・QOLの悪化に悩まされることが多い。当院で施行した前向きコホート研究では、骨格筋の減少、つまりサルコペニアを有する患者は、手術や化学療法に対し脆弱で、長期予後も不良であった。さらに、上部消化管悪性腫瘍手術後1か月の患者の平均摂取カロリーは1200kcal/日で、45%の患者においてはわずか1000kcal/日未満の摂取にとどまっていた。それに伴い、体重は術後1か月間で平均8.3%減少し、骨格筋量も8.5%減少していた。サルコペニアを有する上部消化管癌患者に術前から術後にかけて治療介入することで、骨格筋の減少を抑制し、フレイルティサイクルの進行を予防し、術後の患者ADLやQOLの向上が期待される。2020年より根治手術を予定する食道癌患者を対象に、術後の骨格筋量減少の抑制に対する周術期の栄養運動療法の安全性と有効性を評価するために、「食道癌根治手術患者における骨格筋量減少予防を目的とした栄養運動療法の前向き介入試験」を開始し、予定症例の60%の症例登録を行い、2022年末まで継続中である。
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Surgical Endoscopy
巻: 36 ページ: 1527~1535
10.1007/s00464-021-08440-y