研究課題/領域番号 |
18K11072
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
原 伸正 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 講師 (20284028)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | NAD+代謝 / ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ / ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ / サーチュイン |
研究実績の概要 |
加齢性疾患がさまざまな臓器のNAD+ レベルの減少と関連し、NAD+ レベルを増加させ、長寿に関わるとされるNAD+ 依存性脱アセチル化酵素サーチュイン(SIRT)を活性化することがこれら疾患の予防および治療に有益であると考えられている。そのため細胞内NAD+ 濃度([NAD+])制御の機序解明は重要である。本研究では、NAD+ 合成・分解酵素活性、NAD+ 合成・分解速度、[NAD+]の階層でのトランスオミクス解析を行い、[NAD+]調節におけるNAD+ 合成・分解酵素の関与を定量的に解析し、[NAD+]の調節機序を明らかにすることを目的とする。 昨年度までに、細胞の由来が異なっても[NAD+]は比較的一定に保たれること、NAD+合成の律速酵素Nampt酵素活性の高低に関わらずNAD+合成速度および[NAD+]は狭い範囲に保たれること、合成速度と分解速度はつり合うことを明らかにしている。即ちNAD+合成と分解は緊密な連関があることを明らかにした。この連関のメカニズムを明らかにするため、NAD+分解酵素候補として提唱されているPARP-1、 PARP-2、 SIRT1の関与を検討した。 PARP-1、 PARP-2、 SIRT1に加え、令和2年度は、最近NAD+分解酵素であることが報告されたSARM1を遺伝子編集により欠損した細胞を作成し、NAD+ 合成・分解速度、[NAD+]の階層でのトランスオミクス解析を行った。SARM1は定常状態のNAD+分解に有意に関与せず、合成速度にも[NAD+]にも影響を与えないことを見出した。今後のNAD+分解酵素の同定により、この酵素を標的に[NAD+]を増加させSIRTを活性化することが可能となり、従って加齢性疾患の予防および治療につながるものと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、文献に従いNAD+分解酵素としてPARP-1を想定していたが、予想に反して、本酵素の発現をなくしたノックアウト細胞において野生型細胞と変わらないNAD+分解が生じることを初めて見出した。さらにPARP-2、SIRT1、SARM1遺伝子ノックアウト細胞においてもNAD+分解が有意に低下しないことを見出し、これら酵素のNAD+分解への関与が否定された。新型コロナウイルス感染症の拡大に伴うオンライン講義の準備、教育カリキュラムの大幅な変更により、研究課題に充てられる時間が削減され、[NAD+]調節におけるNAD+分解酵素の関与の解析は当初の計画より遅延している。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度では、[NAD+]調節におけるNAD+分解酵素の関与の解析を引き続き行う。複数の異なるNAD+分解酵素がそれぞれ少しずつ細胞のNAD+分解に関与している可能性がある。そうであれば特定のNAD+分解候補酵素を単独に発現低下させても顕著な効果が表れなかったはずだ。そこで複数の候補酵素を単独ではなく同時にノックアウトした細胞を作製し、NAD+分解酵素活性、NAD+分解速度、細胞内NAD+ 濃度の相関を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(状況)新型コロナウイルス感染症の拡大に伴うオンライン講義の準備、教育カリキュラムの大幅な変更により研究課題に充てられる時間が削減され、研究計画は当初計画より遅延した。 (使用計画) 平成3年度経費に組込み、一般試薬、細胞培養関連製品等の消耗品購入にあてる。
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