研究課題
今年度は新たに動物実験を開始した。脂質組成の異なる4種の飼料[通常飼料(MF),高コレステロール飼料(HC)、高脂肪飼料(HF)、高脂肪・高コレステロール飼料(HFC)]で10週間SDラットを飼育し、肝臓における脂肪蓄積と血清HDLの関連を検討した。1. HF群およびHFC群はMF群に比べ、飼料摂取量が少なく体重が低値であった。HC群は飼料摂取量に差は見られなかったが、体重が低値傾向だった。肝臓組織はHC群とHFC群で有意な脂肪蓄積が見られた。肝臓に蓄積したコレステロール量は両群に差は見られなかったが、HFC群の方がトリグリセライドの蓄積量が多かった。また、HFC群では肝線維化も観察され、血清ALT値もHC群よりも増加していたことから、HFC群の方が肝障害の程度がより強く、非アルコール性脂肪肝炎に近い病態であることが確認できた。2. 血清総コレステロールはMF群に比べ、HC群とHFC群で有意な増加が見られたが、HDL-コレステロールは予想に反してHC群で減少、HFC群で増加していた。HFC群では大型HDLが増加しており、増加したコレステロールは遊離コレステロールがメインであった。大型HDLに含まれるアポEはHFC群で増加、HC群で減少していた。これらの結果から、肝臓における脂質蓄積がHDLの量や質に深く関連している可能性が示唆された。3. HC群とHFC群に見られたHDLの変動要因を明らかにするために、肝臓におけるHDL関連蛋白質の発現を調べた。これまでのところ、アポA1、アポE、SR-BI(HDLレセプター)、LCATなどの遺伝子発現については両群で差は見られなかった。現在、他の遺伝子発現や蛋白質レベルでの発現解析を進めている。
3: やや遅れている
前年度から実施している細胞培養実験で予想通りの結果が得られず今年度へ持ち込まれたことや、動物実験の準備に時間を要し開始時期が当初予定よりも遅れたことから、やや遅れていると判断した。
今年度採取したラット肝臓におけるHDL代謝関連蛋白質の遺伝子発現、蛋白質発現を評価し、HC群とHFC群に見られたHDLの変動要因を追求していく。また今回使用した飼料にはコレステロールの消化吸収を促すコール酸が含まれており、その影響が懸念される。このため、コール酸単独の影響を検討するための動物実験を追加することを考えている。
遺伝子解析等の一部解析が次年度に持ち越されたため、未使用額が生じた。これは次年度に継続して行う解析や追加で行う動物実験等の経費に充てる予定である。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Journal of Nutrition & Food Sciences
巻: 09 ページ: -
10.35248/2155-9600.19.9.763