研究課題/領域番号 |
18K11074
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研究機関 | 島根県立大学 |
研究代表者 |
原田 永勝 島根県立大学, 看護栄養学部, 准教授 (40359914)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | Duchenne型筋ジストロフィー / リードスルー治療法 / mdxマウス / リードスルー薬 / ゲンタマイシン / 食生活 / mRNA品質管理機構 |
研究実績の概要 |
ヒトにおいて、遺伝子変異疾患の約30%は、mRNA上に異所性の翻訳停止コドンが生じるナンセンス型である。ナンセンス型mRNAは、細胞内のmRNA品質管理機構(NMD)によって分解される。リードスルー治療とは、mRNA上でリボソームがPTCを読み飛ばし翻訳を続行させる技術で、ナンセンス型mRNAから全長タンパク質を合成できる。本研究では、細胞のNMDおよびナンセンス型遺伝子のリードスルー治療に対する食生活の影響を解析した。昨年度(平成30年度)の研究において、Duchenne型筋ジストロフィーモデルであるmdxマウス(ジストロフィン遺伝子にナンセンス変異をもつ)を一般飼料あるいは高脂肪食で飼育し、ゲンタマイシンによるリードスルー治療を行った。対照として同系統の健常マウス(一般飼料飼育のみ)を用いた。今年度の研究では、マウスから採取した筋組織(前脛骨筋、腓腹筋)から総RNAおよびタンパク質を抽出した。RNAを逆転写後、定量的リアルタイムPCRによってジストロフィンmRNAを測定した。結果、対照マウス(一般飼料)に比べて、mdxマウス(一般飼料)ではジストロフィンmRNA発現量が有意に低下しており、mdxマウス筋肉では、NMDによる変異ジストロフィンmRNAの分解が行われていることが示唆された。一方、mdxマウスにおいて、ゲンタマイシン投与あるいは高脂肪食単独では、ジストロフィンmRNAレベルに変化は見られなかったが、ゲンタマイシンと高脂肪食の併用投与でジストロフィンmRNAレベルが有意に増加した。筋組織から抽出したタンパク質を用いて、ジストロフィンタンパク質の検出を行った(イムノブロット法)。ジストロフィンタンパク質は、mdxマウス(一般飼料)では検出されなかったが、mdxマウス(ゲンタマイシンと高脂肪食の併用投与)では、ジストロフィンタンパク質がわずかながら検出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度の研究の立ち上げがやや遅れたため、今年度の研究の進行もそれに伴い、やや遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
mdxマウスおよび対照マウスの筋組織サンプルを用いて、NMD活性の制御に関わる小胞体ストレス反応あるいはNMD因子の発現量の変化を解析する。小胞体ストレス反応は、XBP1経路、ATF6経路やPERK経路の変化を解析する(定量的リアルタイムPCR法やウエスタンブロット法)。変異ジストロフィンmRNAの発現量解析(解析済み)により、NMD活性をある程度推測することは可能であるが、定量的リアルタイムPCR法によるNMDマーカー遺伝子のスプライシングバリアント解析(ナンセンス型/一般型mRNA発現量比を求める)を検討することで、NMD活性の変化をより詳細に明らかにできる。マウスの血液解析により興味深い変化を示した血液中成分が得られれば、それをC2C12マウス骨格筋細胞株の培養液に再現し、小胞体ストレスやNMD活性に対する食事(食餌)の影響の分子メカニズムを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成31年度(令和元年度)は、研究費使用を無駄なく遂行することで成果を得ることができた。研究の進行がやや遅れたため、当該年度に予定していた研究の一部を、その研究に使用するための研究費の一部とともに次年度に繰り越した。 次年度に、定量的リアルタイムPCR解析用の試薬や、タンパク質発現解析用の試薬(抗体を含む)の購入を予定している。また、各種消耗品(サンプルチューブやウエスタンブロット用PVDFメンブレンなど)や細胞実験に関連する試薬や消耗品を購入する。
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