本研究では味覚障害の機序およびそれに対して有効な食品成分のスクリーニングを目的として、小型魚類メダカにおいてCrisper/Cas9システムによる味覚受容体T1R3遺伝子を蛍光ラベルし、可視化できるスクリーニングシステムを確立した。T1R3ノックインメダカでは口唇、鰓葉、鰓耙にT1R3が蛍光ラベルされ、その蛍光強度は抗がん剤5FUの24時間処置にて減少した。一方で、グルタミン酸ナトリウムでは48時間の処置で蛍光強度は増加し、遺伝子発現量が増加した。同様に、グアニル酸、イノシン酸などのうま味成分であるアミノ酸でも処置を行ったが、蛍光強度は変化なく、うまみ成分によるT1R3の発現増加はグルタミン酸ナトリウム特異的であった。その他約20種類のアミノ酸、フラボノイドなどの成分をスクリーニングした。 また、T1R3ノックアウトメダカの作成も行った。ノックアウトメダカは現在までに遺伝子配列の一部欠損までは確認しているが、その機能性やスクリーニングへの応用は行えていない。今後これを用いて、脊椎動物が味を感じる機序についてより詳細に行いたい。
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